第9話 猟兵と騎士
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ったんだ……だがそれが間違いだった、私は猟兵団『霧の狂気』に誘拐されてしまった」
霧の狂気……確か二年前まで活動していた猟兵団だったはずだ、人数は少ないが実力者で固められた団だと団長から聞いた事がある。
「でもどうして猟兵がラウラを攫ったりしたんだ?」
「後に知ったが猟兵団を雇ったのは父上を恨む貴族の者だったらしい、その貴族は民から不当な税金を取っていたらしいのだがそれを父上が止めたみたいでそのせいで地位がどん底まで落ちたのが動機だったそうだ」
「何それ、完全な自業自得じゃん」
フィーの言葉に僕も頷く、自分の悪事を明かされた腹いせってことでしょ?恨むなんて……
「なす術も無く捕らえられた私は森の奥に連れて行かれた、私を人質にしようとしたのだろう。私はいつ殺されてしまうのかも分からず唯震えていた、そんな私を助けに来てくれたのが母上だった」
「ラウラのお母さんが……」
「母上はあっという間に猟兵団を蹴散らしたよ、本当に強かった、母上は……」
霧の狂気ってかなりの実力者揃いだったらしいけどそれを一人で蹴散らしたのか、凄いな。
「解放された私は真っ先に母上の元に向かった、だが倒れていた筈の猟兵の一人が何を思ったのか私に銃口を向けていた。私はそれに気づけなかった、母上は私を庇って銃弾を胸に受けた。泣きじゃくる私を母上はずっと抱きしめてくれた、息絶えるその時まで……」
「ラウラ……」
母親を猟兵に殺されたのか、それならラウラが猟兵を嫌うのも無理はないよな……
「私は猟兵を許せない、母上を奪った猟兵を……父上もずっと後悔しているんだ、自分がいればこんな事にはならなかったと。顔には出さぬがいつもそうやって自分を責めている、クラウスも門下生の皆も同じように……」
「その時はラウラとアリーシャさんしかいなかったの?」
「当時クラウスは父上に付き添いで、門下生の皆も修行に出ていた。恐らくその隙を付かれたのだろう」
「そんな……」
ラウラが語った過去は余りに悲惨なものだった、大人の汚い思惑で母親を失った彼女がどれだけの悲しみを受けたのか想像もできなかった。俺やフィーも親に捨てられた身だが記憶はない、だから本当の意味でラウラの悲しみを理解することは、少なくとも今は無理だろう。
「私は猟兵が嫌いだ、だがそなた達の事を嫌いにはなれない」
「えっ……」
「『剣を交え己を知り人を知り本質を知る』……父上が私に教えてくれた言葉だ。どんなに言葉で取り繕っても剣を交えれば相手の本質が分かる。そなたと戦い私はそなたの剣を知った、そなたが悪意を持って力を振るうような人物ではないととっくに知っていたのだ。なのに私は猟兵という言葉に捕らわれてしまっていた、本当にすまなかった……
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