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アヒルの旅
5部分:第五章
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第五章

「何か動いて気持ち悪いんですけれど」
「これが美味しいんだよ」
 おばさんは舌なめずりしながらクワちゃんに答えました。
「もうね。魚や御主人様達がくれる餌も美味しいけれどね」
「虫もなんですか」
「そうだよ。けれどアヒルだったら虫食べると思うんだけれどね」
「僕食べたことないです」
 クワちゃんはあくまでこう正直に話します。
「パパもママも」
「まあ食べないんだったらいいよ」
 おばさんはそれはそれでいいというのでした。
「それでも気が向いたらね」
「食べてみるのもですか」
「いいものだよ」
 穏やかに勧めるのでした。
「美味しくて栄養があってね」
「はあ」
「そういうことでね。あたしが言うのはそれだけだよ」
 話を一旦切るおばさんでした。
「虫についてはね」
「そうですか」
「それでクワちゃん」
 そのうえでまた別の話をクワちゃんにしてきました。
「あんたこれからどうするつもりだい?」
「どうするって?」
「だから。あんたの小屋に帰るのかい?それとも他にも何処かに行くのかい?」
 このことをクワちゃんに尋ねるのでした。
「どうするんだい?これから」
「牧場に行きたいです」
 クワちゃんはおばさんの質問に答えました。
「牛さんや豚さんがいる牧場に」
「ああ、それは丁度いいね」
 おばさんはクワちゃんのその言葉を聞いて満足した顔で頷きました。
「丁度いいよ。それはね」
「丁度いいって?」
「ほら、後ろを見て御覧」
 自分の右の前足で前を、クワちゃんにとっては後ろを指し示しました。丁度そこが牧場なのです。
「後ろをね」
「はい」
「ほら、あそこだよ」
 その後ろを振り向いたクワちゃんにまた告げました。
「あそこは草原が一杯開けてるよね」
「ええ」
 振り向いたクワちゃんが見たのは本当にそうでした。緑の絨毯が木の柵に覆われてそこにありました。けれどそこにはまだ誰もいません。
「あそこが牧場なんだよ」
「あそこがですか」
「もうすぐそこだよね」
 おばさんは優しい声で言ってきました。
「そろそろ牛や豚の皆が出て来るし」
「牛さんや豚さんも」
「それに坊ちゃんも馬に乗ってやって来るね」
 おばさんはこうも言い加えました。
「馬の旦那にね」
「お馬さんも来るんですか?」
 クワちゃんもお馬さんのことは見ていましたし会ったこともあります。このお家の坊ちゃんが馬に乗ってお池のところに来ることがあるからです。とても大きくて真面目で立派なお馬さんです。
「あのお馬さんも」
「そうよ。さあ、今から行くとね」
「はい」
「丁度出て来る時に出遭うから」
「お馬さんが出て来る時にですか?」
 クワちゃんはそのお馬さんのことだと思いました。けれどそれは違
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