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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第183話 言いたかった言葉
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時の彼らの表情、そして 僅かに震えている彼の姿。


――私があいつを、心のどこかでは敵として認識しきれていない?


 震えるその肩に手を触れた瞬間、何かが身体の中に入ってきた気がした。そして、感情が生まれるのも判った。同情、憐れみ、共感……、どれも違う。だけど、何かが生まれた。

 そして、もう1つ。多分、次が重要、最も重要だった。

 彼に、リュウキに触れた時、仄かに暖かさを感じ取る事が出来たんだ。アバター、設定された体温だ。ただ、それだけの事、だった筈なんだ。

 だけど、強い何かを感じた。懐かしさに似た何かを。


――……私は、あいつに触れた事が……ある?


 そう、心の何処かで引っかかった。だけど、それだけは即座に否定した。そして、暖かさを、感じた事をも、もう否定した。……感情の一切を。


 何故なら、そんな事を感じられる人間が、暖かさを感じること、感じられる様な人間が居る筈が無いから。

 ……氷である自分に温もりを与えるのは、強くなり、そして勝利したその時だけだ。自分を支えてくれるのはそれだけだ。……自分を助けてくれるのはそれだけ。つまり、自分の強さだけだ。

 シノンはそれを再認識したと同時に、これまで感じていた全てを一蹴する事が出来た。彼らの事を見ていて、聞こうとすら思っていた事を、自分の中で完全撤回。2人が抱えた事情など知りたくないし、知る必要もないのだ。

 自分の糧にする為のターゲット。……それも最高のだ。


――……それだけ判っていればいい。私の闇を、暗闇を一緒に背負ってくれる人間なんか、手を握ってくれる人間なん……っ!!


 この時、氷になっていた自分の中に何かが沸き起こってきた。なぜ、構えている手に、何かチクリとまた感じた。戦いが始まって、いや……あの2人の戦いを見ていて収まったと思っていたアレが、また。

「っ……」

 シノンは、軽く首を左右に振る。引き金(トリガー)から、指を離し 手を握り、開くを繰り返した。この戦場では愚公だと言える。だけど……、せずにはいられなかった。自分の心が乱れている方が深刻だったから。

 そんな時だ。


 一瞬、目の前の高架道に、何か影が現れた気がした。シノンは慌てて再びスコープのレンズを覗いた。


「……な……っ」

 そのスコープの中に居たのは、微風に揺れる束ねた銀の髪を持つ彼がいた。迷彩服の所々に銀のラインが入っているせいか、それに陽光が反射し、輪郭に光も宿している。目立つ、と言えばそうだが、それが逆に恐ろしくも思える。正面からの撃ち合いも勿論あるが、こんな1対1の戦いであれば、身を隠し、隙をついて攻撃をする。……撃ち合いをする。それがガンゲイル・オンラインでの戦いでもある。

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