星の瞬きは未だ届くことなく
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知っている。
いつでもバカばかりな彼のことを胸に仕舞って、彼女はまた苦笑を零した。
「……さて、些か無駄話が過ぎたようだ。白蓮殿に先を越されぬよう、我らも我らの仕事を終わらせてくれよう」
――真名の通りに、瞬く光を見せつけなければならんのだから。
眩しい木漏れ日と湿気の深い森の底。
彼女の心の奥を読み取れるモノはまだ遠くであった。
深く険しい山々に囲まれている益州は守るに易く攻めるに難い土地として智者に広く知れている。
しかしながら、その土地を攻めるのが容易な場所もあるのだ。
それが南蛮。五胡とは少しばかり毛色の違う異民族の暮らす土地である。
独自の文化で生きているその土地には大王と呼ばれる統率者が君臨し、その政治形態も何もかも謎に包まれていた。
ただし、益州の南西に位置する都市には定期的に攻撃を仕掛けてくると噂され、その狙いは専ら食物であった為、食糧生産技術が発達していないのではないかと言われている。
益州と南蛮の関係は非常に芳しくない。使者が赴いても帰って来ず、軍を派遣しても追い返されて来る。
敵の様相を聞いても答えようとしない兵士達。さらには、南蛮に遠征に赴いた兵士達は皆、気力を無くして兵士を止めて行く。
零す言葉は決まって……自分達はもう兵士として生きていけないとかなんとか。
意気消沈した姿から止めるモノはおらず、頑なに話そうとしないその姿はなんともモノ寂しいものであったらしい。
そんな南蛮に向けて、劉備は防衛を命じられていたが、交渉せねばならないと劉璋を説き伏せて軍を遠征させていた。
出立した将は関羽、趙雲、張飛の三人。劉備自身はまだ劉璋との蟠りが解けていない為に軍師である徐庶や友好的関係にある黄忠や厳顔と共に居残り、益州の変革に向けての行動を進めていた。
一人の少女は、侵攻の報せを聞いてため息を吐いた。
純粋に自身の生を謳歌していた少女は……自信満々と言った様子で呆れ果てる。
南蛮を治める王である少女は大きな肉球でふにふにと腿を抑えながら笑った。
「いつも通り奪ってやればいいにゃ。叩き潰して、追い返して、弱り切った所でたっぷりと美味しいモノを頂きにいくじょ」
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