星の瞬きは未だ届くことなく
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や桃香殿のように思想や考え方を変えたいのではないし、彼の遣り方が間違っていると言うつもりも無い。それは白蓮殿とて同じかと思うが」
む……と少し考え込んだ愛紗もその違いに気付く。何も言わず、彼女の話に聞き入っていた。
「勝った方が正しいなどと言ってしまえば我らの言の葉は届かなくなってしまう。人々の心に届かぬ理不尽な押し付けを、どうして……人々の為にしか生きられぬ彼に投げられよう?
それでいて、していることと言っていることが矛盾しつくしてしまう乱世では、話だけでも何も変わらぬ。力はどうしても必要だろう。
ただし秋斗殿の厄介な所はな……曹操ならば力で示せば折れることがある、孫策や白蓮殿なら愛しい地の安寧の為に諦めるかもしれない……だが、彼にとって、諦観の二文字は己の死でしか現れない」
何か言いたげに口を開いてもそう思っているから口を挟めず、愛紗はゴクリと生唾を呑み込んで押し黙った。
「夢と未来を語る愛紗や桃香殿が相手であれば……ではあるがな」
目を伏した星の横顔に一滴の汗がたらり。
大変な男に惚れたモノだと苦笑を零しそうになるもどうにか噛み殺した。
「……急ぎ過ぎている、と白蓮殿は言っていた。秋斗殿は乱世に生き過ぎているのだよ。
人の心にするりするりと入ってくるくせに、自分の悩みなど一つも話さず。乱世でなくとも世界は変えられると知っているくせに、乱世で無理やり変えてしまおうとする。
だから私と白蓮殿が彼に説くのは幽州で彼が言っていたことだけでいい。心を折るのではなく諦めでもなく、ただお茶や酒を飲んで話そう……私と白蓮殿が秋斗殿と共有したい夢や未来は、声を荒げ拳を振りかざして語るモノではない、それだけのこと」
皮肉に聴こえる言い方。星と白蓮の二人は愛紗達とは少しばかり違った。
「……そうか。お前にはそう見えるんだな」
「ああ、桃香殿と愛紗には悪いが……二人が彼相手に語れば、その夢と未来は押し付けにすり替わる。押し付けるつもりなど無いはずなのに、な。決定的な違いはきっとこれだろう」
ふむ、と顎に指を当ててから、納得といったように星は一つ頷いた。
「……極論、私と白蓮殿は彼と分かり合えなくてもいい。ぶつかり合うほど譲れない所はあるし、何かしらの落としどころを見つけるくらいしか出来んが、我らの言い分も何処かは必ず通して、彼の言い分もどれかは必ず受け入れる。
しかし桃香殿は……良い人だから必ず分かってくれると言っていた。それはつまり、桃香殿と同じ夢を見て欲しい、ということだろう?
そこが違う。拳と拳でぶつかり合うような意見の押し付け合いは、曹操や秋斗殿のしていることと変わらない。
益州の平定案と同じ事が出来ない相手だ。だからといって直ぐに相手の舞台に上がれば、その矛盾を
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