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乱世の確率事象改変
星の瞬きは未だ届くことなく
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て憐みと同情を向けた夏候惇の隻眼を思い出す。
 もどかしいというように歯噛みしていたその目は、秋斗が倒れて直ぐに愛紗を射抜いたのだ。

――敵意と殺意を交えた視線。愚か者を見下す侮蔑の眼。曹操軍の将の方が彼のことを理解していたということ。何が……何が背中を預け合える仲間。私には、その価値すら無かった。

 ジクジクと苛む自責の感情が湧くも、愛紗は無理やり押し留めた。
 それでも、と。
 桃香の言う話し合いなど欠片も通じない相手……ではあっても、通じるとすれば……劉備軍には二人だけ。

 ただし、その二人と彼が刃を向け合うこと自体、どれだけ哀しいことであるのか愛紗に分からぬわけも無い。

「星は……戦えるのか?」

 彼と……言う前に彼女がまた喉を鳴らした。愚問だ、というように。

「くく、当たり前だ。目的がそもそも違うのだから戦うというのもおかしい。彼を引き摺ってでも白蓮殿の元に連れて行くだけで、その為に刃を交えることが必要だと言うならするさ」

 楽しげに語る星は心が傷ついているようにも見えない。
 まるで恋人との逢瀬を楽しみにする少女のように熱っぽい吐息を吐き出した。
 直ぐに悪戯好きな猫のような笑みを浮かべ、彼女は片目を閉じた。

「武で勝ち、信念で勝ち、親愛で勝ち、想いの強さで勝つ……なに、女に此処までさせるのだ、臆病者の彼であれ男なのだから逃げはすまい。というより、私が勝負を挑めば徐晃隊の兵達は秋斗殿に断らせることはしないだろう。友であるが故に避けられぬ戦いがある、だから私と秋斗殿の勝負に水を差さん……白馬義従に帰参してきたモノと同じならそういう輩だ、あ奴等は。
 まあ、勝った暁には……雛里や徐晃隊の前で口付けの一つでもさせて貰うが」

 胸にある想いは愛紗も知っている。
 しかし、愛紗が心配しているように、愛しいからこそ辛いというモノでは無かった。
 まだ納得し兼ねると眉を寄せた愛紗に、仕方なし、と星は小さく息を吐いた。

「趙子龍として徐公明に勝ち、そうして初めて星として私の隣に来いと言えるというもの。そうだろう?」
「そういうモノ、なのか?」
「あくまで私はだ。愛紗がどう思うかとか、他がどうのは知らんな。ああ……白蓮殿は私と秋斗殿が戦う事を憂いているが、コロシアイにならないと信頼してもいるぞ」

 隣に居て欲しいと願った。寄り掛かりたいとは思わなかった。友のまま、家族のまま、その延長線上で隣に立てればいいと思った。

――わがままも、意地っ張りも、悪戯も、呆れたように苦笑して付き合ってくれるから……。

 微笑みは穏やかさが宿り、どれだけの想いが其処にあるのかを愛紗も読み取る。

「私と彼が戦うとしてもそれはただの意地の張り合いに過ぎんよ。いうなれば喧嘩だ。
 愛紗
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