巻ノ十二 都その八
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「だから拙者もな」
「奢侈はされませぬか」
「それはせぬ、それに幾ら贅沢をしてもそれは一時のこと」
そこに無常も見ての言葉だった。
「永遠ではない、楽しんでも仕方ありませぬ」
「左様ですか」
「だからマントもよい、それに拙者には既に服がある」
「今着ておられるものですか」
「それに具足も陣羽織もある」
武具の話もするのだった。
「ならばよい、充分じゃ」
「そうでありますか」
「そう考えておる」
「それでは拙者もそれで」
言わないとだ、猿飛も応えてだった。
彼もそこからは言わなかった、だがそうした話をしつつも見て回る都は素晴らしくだ。幸村の興味をいたく刺激した。
それでだ、幸村は休息に入った店で団子を食いつつだ、家臣達に言った。
「こうした賑わった街を見ると楽しい」
「そのことはですな」
「殿も楽しまれていますか」
「民が栄え楽しんでいる」
幸村が見ているのはこのことだった。
「これ以上にないまでによいことじゃ」
「それを御覧になられてですか」
「殿もご満足ですか」
「民が楽しんでいるのを見ていることを」
「そのことをですか」
「うむ、これ程よいものはない」
幸村は串に刺さっている白い団子を横から食いつつ答えた。
「やはりまずは天下泰平じゃ」
「天下が落ち着いてこそ」
「民達は楽しめる」
「殿はそれが第一ですか」
「そう思われていますか」
「戦はないに限る」
こうも言うのだった。
「戦で傷付くのは民と国、どちらも傷付けてはならぬ」
「ううむ、戦は武士の務めですが」
「それでもな」
猿飛にだ、ここではこんな話をした。
「戦はせぬに限る、そしてしたとしてもな」
「戦をしてもですか」
「民と国は絶対に傷付けてはならぬし」
「それにでありますか」
「敵といえども無闇に命を奪ってはならん」
「敵でもですか」
「無闇に血を流して何になるか」
幸村はそうしたことには強い拒絶を見せていた。
「信玄公も謙信公もそれは忌み嫌われていた」
「はい、どちらの方もです」
穴山が幸村の今の言葉に確かな声で答えた。
「戦になろうともです」
「無闇な殺生はされなかったな」
「そうしたことは非常に嫌われていました」
「そうじゃ、それは真の武士のすることではない」
「だからですな」
「拙者も同じ考えじゃ」
穴山にも言うのだった。
「戦になろうとも無闇な殺生はせぬ」
「余計は血を流さずに」
「戦う、そうする」
「それが殿のお考えでありますか」
「そして真田家のじゃ」
幸村だけでなくというのだ。
「真田家は絶対にじゃ」
「無闇な殺生はせぬ」
「戦になれば力の限り戦おうともな」
それでもというのだ。
「人を余計に殺すことはせぬ」
「それが
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