巻ノ十二 都その七
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「そして我等が殿です」
「政も知っておるからか」
「そうです、では殿これより」
「うむ、都に参ろうぞ」
「さすれば」
ここで話を一旦止めてだった、一行は都に足を進めた。そして。
都に入るとだ、遠目で見るよりもだった。
賑わいがわかった、多くの者が行き交い店も多い。その賑わいを見てだった。
幸村は目を丸くさせてだ、唸って言った。
「こうして中に入って見ると」
「驚くばかり」
「全くですな」
海野と望月の二人の六郎も言う。
「色々な店があり」
「そこに人が行き交っていますな」
「これが今の都でありますか」
「相当なものですな」
「拙者ははじめて見た」
幸村にとってははじめての上洛だ、それ故に言うのだった。
「これが真の賑わいか」
「あと堺もですぞ」
猿飛が幸村に言う。
「凄い賑わいでして」
「あそこもじゃな」
「左様であります」
「そうか。見れば」
ここでだ、幸村は。
右手の店に出入りしている青い目と赤い髪と髭に白い肌の者達を見た。見れば背丈は望月程の大きさである。
その彼等を見てだ、幸村は言った。
「あの者は南蛮人じゃな」
「そうです、あの者がです」
猿飛は幸村にすぐに答えた。
「南蛮人です」
「目の色が我等と違うな」
幸村はその目を見て言った。
「そして身なりもな」
「先に変わった服の芸人と会いましたが」
「あれがじゃな」
「普通の南蛮人の格好です」
「ふむ。そういえば」
幸村はその南蛮人が肩から羽織っている身体を背中の半分をくるぶしまで覆うその丈の長い着物を見て言った。
「あの変わった羽織は面白いな」
「マントですな」
「あれはマントというのか」
「はい、前右府殿や前関東管領殿が着ておられました」
上杉謙信のことだ、謙信は関東管領であったのでこう呼ばれているのだ。
「どちらの方も洒落好きでしたので」
「確かに格好よいな」
「では殿も如何ですか」
「いや、高いであろう」
幸村は猿飛の誘いにこう返した。
「だからな」
「宜しいですか」
「奢侈はよくない」
はっきりとした言葉だった。
「だからな」
「左様ですか」
「真田家は小さい、そしてお世辞にも豊かとは言えぬ」
十万石のだ、徳川や上杉と比べるとほんの小さな家だからというのだ。
「しかも武士は贅沢をせぬものだ」
「だからでありますか」
「その前関東管領殿も普段は質素であられたな」
「酒はお好きでもです」
謙信の酒好きは有名だった、それで猿飛も言うのだ。
「それがしも聞いた限りでは」
「塩や梅を少しで飲まれてな」
「マント以外の身なりも質素であられたとか」
「前右府殿も普段は節約されていたという」
「では武士は」
「贅沢をせぬもの」
それ
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