解かれる結び目 5
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とても不格好だわ。今の私。
山の中腹よりちょっと高い場所を全力で疾走して、汗だくになって。
そんな責任は負いたくないと、我がままに怯えて、泣き喚いて。
みっともないったらありゃしない。
だから、かしらね?
今朝はエルンストの行動一つであんなにも動揺してたのに。
今は、こうして彼と二人きりで居ても、全然ドキドキしない。
「そうか。ごめんね? じゃあ、これはお詫び」
「え?」
私の背後に回ったエルンストが、首筋で髪を束ねているリボンを解く。
緩やかな風にさらわれた白金色の、膝裏にも届く長い髪をたぐり寄せ。
手早く三つ編みにしてから、再度リボンで括った。
引っ張られた感じはしなかったのに、丁寧に編み込まれてる気がする。
「本当に器用なのね、貴方」
「どうかな。うんと小さい頃なら母さんの髪で遊んでた覚えはあるけど……ねえ、マリア。お役目の時、何かあった?」
「!」
「神殿を出ていく様子が普通じゃなかったし。泣いてたのは、どうして?」
貴方は気付いていたのね。
もしかして、礼拝堂に居た皆にも伝わってしまってる? お客様にも?
「……なんでもないの」
言えない。
今更、自分の立場が怖くなった、なんて。
貴方が知ったら、呆れる? それとも怒る?
産まれてからずっと護られてきたクセに。
世界中でくり返されている惨劇から目を逸らして耳を塞いできたクセに。
その上、力を得てもまだ逃げたいなんて、ふざけるなって。
そんな臆病者の役立たずを自分に護らせてたのかって、幻滅する?
「相談もできないくらい、僕は頼りない?」
「! 違うわ! そんな意味じゃない!」
頼りにしてる。
頼りにしすぎたのよ。
私は貴方の存在に甘えてた。小さな子供のまま、すがってた。
今だって、貴方が心配してくれてるのに、答えないことで甘えてる。
嫌われたくないと、甘えてるんだわ。
なんて酷い。
なんて自分勝手な私。
最低。汚い。
でも、こんな私を知られたくはない。
まるで、底無しの泥沼に沈んでいくみたいよ。
「君を責めるつもりはないよ。でも、そんな風に震えるのはやめて欲しい。僕まで悲しくなる」
「……っ」
『君が涙すると誰かが悲しくなる』
聴いたばかりの言葉を思い出して、もう一度エルンストに向き直った。
「友達として教えて。神々は君に何を告げた? 何が君を追い詰めてる?」
エルンストの青い目が翳る。
彼の曇った表情が、私の胸にチクッと刺さった。
こんな顔をさせてるのは、私?
でも、嫌われたら…………
「力と、翼が解放されたの。私は敷地の外へ翔んでいけるようになっ
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