暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 5
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に体を寄せては吹き飛ばされてる茶髪緑目の男性がウェルスさん?
 二人と親しげに話してる金髪(だいだい)目の男性が……
 アホリードさん?
 ドアホリードさん?
 いえ、まさかそんな名前じゃないわよね。
 ホリードさん?

 やっぱり三人共、私と同じくらいの年齢にしか見えないんだけど。
 魔王退治とか子供がどうとか、どういう意味なんだろう?
 言動は喧嘩腰なのに、それでいて仲は良さそうな、不思議な人達。

「マリア様」
「! エルンスト……」

 正門へ向かう林の中から、騎士姿のエルンストが出てきて。
 私の足元に(うやうや)しく(ひざまず)いた。
 まさか、私の後に付いて来てたの?
 神殿の中から、ずっと?

「ご自室へお戻りください。貴女は神聖なる女神マリア。お役目以外では、人前にそのお姿を見せてはなりません」

 私の軽率さを厳格に戒める、警戒と怒りを(にじ)ませた険しい表情。

 …………そうね。
 本来ならお客様と私語を交わすなんて、私の立場上良くはない。
 姿を見せるのもそうなんだけど。
 解ってたけど……

 …………ううん、解ってない。
 私は何も解ってない。

 女神マリア。
 私は、女神マリア。
 世界を護る為に死ねと言われている、天神(てんじん)の一族最後の(かんなぎ)
 どんなに怖くても逃げられない。
 逃げる場所なんて、どこにも無い。
 ……生贄(いけにえ)なんだわ。私は。

「ええ。そうね」
「お屋敷の手前までお送りいたします」

 お屋敷へ向かって、林沿いにふらふらと歩き出す。
 その私の半歩後ろから、エルンストが付いて来る。
 視界の端で、お客様三人が私に一礼してから神殿へ戻っていった。

 友達、なのかしら、あの三人は。
 とても息の合う、仲が良い友達?
 コーネリアさんとウェルスさんは……
 もしかしたら、ちょっと違う関係なのかも知れないけど。

「良い、な」

 小さい頃の私とエルンストみたい。
 三人ほど近い距離感ではなかったと思うけど。
 きっと、今の私とエルンストよりは似てる。
 だって、エルンストは……

「マリア」
「…………え?」

 呼び捨て?
 騎士や神官の往来が多くて、人目につきやすい廊下の近くで?
 自分から、私を呼び捨てにした?

 思わず足を止めて振り返ったら、エルンストが友達の顔に戻ってる。

「そのリボン、お役目中でも使ってくれるんだね」

 ……ああ、これ。

「本当は三つ編みにしてから結ぶつもりだったのよ? でも、貴方のせいで手が震えて、ちゃんとできなかったわ」

 左手で結び目を確認すると、少しだけ弛んでる。
 きっと、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ