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逆さの砂時計
解かれる結び目 4
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るのよ…などと口で説明しても、その場で出来上がった夕飯を見られる訳じゃないから、子供の頭では経過と結果が結び付かない。そこで大人は考える。この経過を如何にして結果と結び付けようか」
 なに……何を言ってるの?
 誰……?
 「この場合の経過とは即ち買い物行為であり、結果とは子供にも有益であるという証明だ。買い物行為が子供にも有益だと即時証明するには?」
 恐る恐る抱えた顔を上げる。
 「そう。ご褒美という結果を先に呈示してしまえば良い。子供が好む物を現物として見せるか、条件として示すかは、買い物の内容で考慮すべき駆け引きだけど。ひとまず子供の頭の中では面倒臭い行為と物を貰える結果で釣り合いが取れる。大人からすれば、そもそも子供の為でもある物を買いに行かせる訳だから、ご褒美分は損失かも知れない。でも、ご褒美を受け取った子供は高い確率でこう答えるんだ」
 ……太陽が……降って来た?
 「ありがとう! って、無邪気な笑顔でね」
 金色の髪が眩しい。この男性は誰?
 「大切な家族の笑顔は、果たして損失と思われたご褒美分に不足するものだろうか? まぁ、家族への想いの在り方なんて、家庭それぞれの価値観があるし。他人が口出しする事じゃないけどね」
 あははと軽快に笑う。橙の瞳が柔らかく細められる。
 ……ああ、さっき私に微笑んでたお客様の一人だ。
 「少なくとも俺は、純粋な笑顔が何かに劣る事は無いと思ってる。さて、君は周りの人達に笑っていて欲しい? それとも、泣いて苦しんで呻いていて欲しい?」
 「……苦しんでるのは……嫌だわ」
 「そう? なら」
 「!?」
 な、なになに!? 引っ張らないで転ける……っ
 「笑って! 魔王退治ってお使いに行く俺に、ご褒美をくれると凄く嬉しい!」
 「え!?」
 ダンス? これ、上流階級の人間がよくやってるらしいダンスって動きよね? 屋敷でもたまに見かけるけど……あ、足が(もつ)れる! それ以前に今、なんて言っ……
 「君が笑うと誰かが笑う。君が涙すると誰かが悲しくなる。俺も、誰かが悲しんだり苦しんでる姿は好きじゃない。君が同じように思える人なら」
 「きゃ……」
 くるんっと回転させられて、腕の中に閉じ込められる。
 つ、翼があるのに、なんて器用な事をするの、この人!
 間近にそれこそ無邪気な笑顔が迫って、また太陽が降って来た。

 「君も、俺達の仲間だね!」


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