解かれる結び目 4
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
自由な村の人達が羨ましかった。
翔べるわけでもない、飾りでしかない翼が鬱陶しいと。
何度本気で煩わしく思ったことか。
なのに、自由になった今、世界が怖い。
見えるもの、感じるもののすべてが、私の心臓を押し潰そうとする。
「やめて……っ! 私に期待なんかしないで!!」
甘えてた。
甘えてたんだ。
私は何も解ってなかった。
巫の意味も、一族に求められていたものの大きさも全部。
理解なんて、少しもできてなかった。
自由に憧れた。
恋に目が眩んだ。
夢を得たいと願ってた。
鳥籠を出たって、その先に行きたい場所なんか無かったのに……!
「最低だわ、私」
見えない手に絡め取られそうで、堪らず神殿から逃げ出した。
全力で走って行き着いたのは、吹き貫けた廊下が見える林の中。
本当は裏門まで行きたかったけど、体力が追いつかなかった。
柵側へ背中を向けて、適当な木に寄りかかり。
両膝を胸に引き寄せて抱える。
廊下を歩いていく女官の数人が、私に気付いたみたいだけど。
横目にちらりと見ただけで放置してくれた。
そのほうが私も嬉しい。
今は、特に。
「父さん……、母さん……」
二人はいつも、笑ってくれてた。
敷地内に居ない時のほうが多かったけど。
悪魔に殺されるまではずっと、私を大切に育ててくれた。
ねえ。その間、二人もこんな恐怖に耐えていたの?
戦うって、こういうこと?
役目を果たせと。
他人の為に、力を……命を尽くせと。
見知らぬ不特定多数の他人の為に死ねと言われて、怖くない筈がない。
それでも、笑っていたの?
「できないよ……そんなの、私にはできないっ……」
胸が苦しい。
頬が引き攣る。
抱えた頭が痛い。
目蓋をきつく閉じても、涙が溢れて止まらない。
「いやっ……! こんなの、嫌だよぉお……っ!」
「例えば、夕飯の材料を買ってきてと子供に頼んだとしよう。大抵の子供は面倒くさいと嫌がる。当然だね。自分の用事以外で自分の体を動かすのは、子供じゃなくたって至極億劫だ。それは親のほうも重々承知してる」
…………え?
「これは貴方の為でもあるのよなどと口で説明したところで、その場ですぐ出来上がった夕飯を見られるわけじゃないから、子供の頭では経過と結果が結び付かない。そこで親は考える。この経過を、いかにして子供の頭の中で結果と結び付けようか」
なに……何を、言ってるの?
誰……?
「この場合の経過とは買い物であり、結果とは、子供にも有益であるという証明だ。買い物へ行くこと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ