暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 4
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て男性かしら?
 「よろしくお願いします」
 「……神々の導きのままに」
 礼拝堂の祭壇の前に立って、正門側の正面入り口を見据える。
 祭壇と入り口の間には、大人が横に五人並べるほどの通路と低い階段。その脇に等間隔で天井を支える六本の大きな石柱。更にその外側には、複数人で座れる木製の長椅子がびっしりと整列してる。この椅子は敷地を整える為に伐採した木を加工した物らしい。父さんの母さんよりもずっとずっと昔……相当古くから使われてるのに現役って凄いわ。
 何層分も吹き貫ける高くて広い礼拝堂の壁に散りばめられたステンドグラスの光が石床に輝く様は、宝石箱をひっくり返したみたいでとても綺麗。その総てを見渡せるこの場所は結構好き。
 右側一番手前の椅子にお客様三人が。左側一番手前の椅子に大神官様が着席して、それぞれの外側に護衛の騎士が二人ずつ並んでる。大神官様の横に立ってるのは……エルンスト。今は仕事中だから、昨日みたいに砕けた表情は見せてない。
 真摯な青い瞳が映しているのは、最後の巫である女神マリア。
 ……ええ、そうよ。私は女神マリア。勤めを果たす為に此処に居る。神々が定めた、この鳥籠の内側に。
 この場所に私個人の感情なんて要らないの。
 「皆様もどうぞ、心静かにお祈りください」
 両手を組んで目蓋を閉じ、太陽の光が降り注ぐ天井を仰いだ。
 ブローチは昨晩部屋に戻って速行小箱に戻した。リボンも結局、首筋の辺りで結んだだけ。殆どいつもと変わらない姿でも、神々には不敬に思われるかしら。
 ……ううん。邪念は棄てよう。静かに。神々の言葉を受け取ろう。
 静寂。静謐。静粛。
 何でも良い。ただ、示される道のままに……

 「え」

 パリン! と、何かが音を立てて割れた。パッと目を開いて周りを見渡しても、景色に変化は無い。
 当然だ。その音は私の頭の中だけで響いたんだから。
 「………嘘」
 私を僅かに見上げた人達が、不思議そうに首を傾げる。
 私は産まれて直ぐ、神々の意思によって護られた。神殿の敷地から出られないように結界を張られ、力を制限されていたらしい。
 その理由は私の力にある。
 空間を司る力。純粋なる神々にも等しいこの力は、父さんとも母さんとも違う。私の存在は人間にも悪魔にも良い影響を与えないと判断されて……
 でも今、突然解放された。
 これはどういう意味? 神々は何故、この瞬間に私を放したの? 理由も無くこんな事をされる筈がない。
 深呼吸して、もう一度神々の声に耳を傾ける。
 聴き逃してはいけない。慎重に。真剣に。どうか真意を……
 「…………」
 ……駄目。神々はもう、此方を見ていない。今日のお役目は終わりなんだわ。
 「……神々のご意思は言葉を閉ざされました。また明日、来られるがよろしい
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