3部分:第三章
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ました。
左の道を行くと熊さんの言葉通り鹿さんがそこにいました。長いお髭を生やして道に立っています。
「あっ、鹿さん」
「おお、狐の奥さん」
お母さん狐は鹿さんがそこにいるのは知っていましたが鹿さんはお母さん狐が来るとは思ってはいませんでした。それで最初に出した声の感じがそれぞれ違っていたのです。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
まずは挨拶を交わしました。
「今日は何処へ行かれるのですかな」
「町まで」
お母さん狐は鹿さんにも正直に答えました。
「子供達に手袋を買ってあげに行くんです」
「そうですか、それはよいことです」
鹿さんはそれを聞いて顔を崩して笑いました。
「もう寒いですからな」
「そうなんですよ。もう子供達も寒い寒いって言っていまして」
「だからですな。町まで」
「はい」
お母さん狐は頷きました。そして話を続けました。
「それはよいことです。けれど町に行かれるのならば用心して下され」
「何かあるのですか?」
「はい、どうやら入口で蛇がいるそうなのです」
「何だ、蛇ですか」
けれどお母さん狐はそれを聞いても平気でした。
「蛇だったら何の心配もいりませんよ」
狐は蛇をよく捕まえるからです。特にお母さん狐はそれの名人でもあります。蛇なんてちっとも怖くはなかったのです。
「いやいや、ところがこれが普通の蛇ではないのです」
「マムシですか?」
「また違います。大蛇なのです」
「大蛇」
「はい。それはもう呆れる程大きな。それが町の入口で寝そべっているのです。それで皆怖くて引き返しておるのです」
「それはまた」
「行かれるのならば御気をつけ下さい。下手をするとぱっくりですからな」
「わかりました。それでは」
そんなに大きな蛇がいると聞いて怖くないと言えば嘘になります。けれどそれでもお母さん狐は行くと決めたのです。鹿さんにお別れを告げるとそのまま町へ向かいました。その時ふと思うことがありました。
「そうだ、蛇なら」
お母さん狐はあることに気付いたのです。
そして町まで行く途中にある酒屋さんに入りました。店主のリスさんが出て来ました。
「御主人のお酒ですか?」
「いえ、町まで行くので」
お母さん狐は言いました。
「買って行こうと」
「町へ行くのにですか?」
「はい」
「それだったら。いらないと思いますけれど」
リスさんはそれが少し不思議でした。けれどお母さん狐はそれでもお酒が欲しいと言いました。
「まあいいですから」
「そりゃ買って下さるんならこっちもお渡ししますけれどね」
お金も出してもらっては売らないわけにはいきませんでした。
「それじゃあ。どうぞ」
「はい」
「途中飲んでその辺りに寝転がったりしないで下さいよ。もう寒いですから
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