解かれる結び目 3
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た。
「……ええ。とても」
冷静になってみれば、うっかり眠ってしまったのは大失敗だ。せっかくの憩いの場が早々と見付かってしまうなんて。エルンストは神殿騎士。私の動向は上官に報告されてしまう。そうなればあの場所も監視対象に指定されるに決まってる。自業自得だけど、残念。
「そう……。じゃあ、二人だけの秘密にしようか」
「え? ちょっと」
何処へ行くの? 裏口から入るんじゃないの?
「静かに。廊下側から入ろう」
……黙っててくれるの? 上官に報告しないでいてくれるの?
「神様にもお休みは必要なんでしょう?」
廊下の柱に掛けられた燭台の灯りを背負って微笑むとか。
なにそれ、ズルい。卑怯だわ。私を喜ばせてどうするつもり?
「そうよ。お休みは万物に絶対必要不可欠な栄養なのよ。だから、その……」
「ん?」
「……ありがと……」
……エルンストになら、良いわ。
本当はもっと一人きりを満喫したいけど。
私を揶揄って笑う酷い人だけど、理解しようとしてくれるたった一人の友達だから。
誰か別の人に見付かるまでは、二人の場所でも良い。
「……ねぇ、マリア」
「? え」
緩やかな曲線を描いたエルンストの唇が……心臓の位置に飾られたブローチに舞い降りた。
「似合ってて、良かった」
「………………。」
「ご自室でゆっくりお休みなさいませ。マリア様」
一礼して去って行く背中を、私は見てない。
目には映ってるわよ。でも冷静に見られる訳ないじゃない。
今、私は何をされた? ブローチにキスされた?
心臓の辺り……胸の辺りを、エルンストに、キス、された……っ?
「……ッッ!! エルンストのバカ!」
信じられない信じられない信じられない!! ちゃんと告白すらしてない相手に普通、そういう事する!?
「不良だわ! 不潔だわ! 変態だわ! 騎士失格の無礼者よ!」
こんなの、いきなり唇にするより悪質じゃない! どうして急に……
「……今日の貴方、おかしいわよ……エルンスト……」
そうだ。急すぎる。どうしていきなりキスとかするの? 今まで主人として……少しは友達として接してくれてたのに。気を許しても良い友達だって、そう思ってたのは私だけなの?
「……?」
ぎゅうって、心臓が締め付けられたみたいに痛い。喉の奥が引っ張られてる。どうして私、泣いてるんだろう。
今日のエルンストは私が知ってる友達じゃない。
なんか……嫌だ…。
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