3部分:第三章
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第三章
「僕が狩猟の時の羽根付き帽子で狢さんがシルクハットって感じで」
「そうした感じでなんだ」
「それぞれ違う帽子を被りません?」
「それを目印にするんだ」
「これならわかりますよね」
狢に対する話を続けます。
「それならどうでしょうか」
「そうだね。いいかもね」
「ええ、じゃあ早速そうします?」
「思い立ったが吉日だしね」
狢も狸の言葉に頷きました。そうしてでした。
「それじゃあ」
「はい、それじゃあ」
「二匹で」
こう話して二匹は早速それぞれ違う帽子を被ってみました。狢がシルクハットで、狸が狩猟の白い羽根のある帽子で。それを被ったのでした。
そしてそのうえで森の中を歩くとです。もう誰も彼等を見間違えませんでした。
「ああ、狢さん」
「狸さん」
その帽子を見て挨拶をします。
「こんにちは」
「お元気そうですね」
「うん、今日も宜しく」
「楽しくやりましょう」
二匹は笑顔で皆のその挨拶に応えます。
そのうえで、です。お互いに話すのでした。
「いや、帽子を被っているだけで」
「見分けてもらえるようになりましたね」
「そうだね、たったそれだけで」
「有り難いことですね」
「全くだよ」
二匹は今は横穴の中で猿酒を飲んでいます。それと一緒に山の幸を食べています。見分けてもらえるようになって二匹でお祝いをしているのです。
「そうか、こうすればいいんだ」
「外見がそっくりなら目印を身に着ける」
「それでいいんだな」
「それで」
そんな話をしながら楽しく飲んでいます。そして食べています。
「じゃあこれからも」
「そうだね、帽子を被っておこう」
「間違えられない為に」
二匹で笑顔で話をするのでした。お酒と御馳走を楽しみながら。もう二匹を間違えることはなくなりました。二匹とはそのことにずっと幸せを感じていました。
狸と狢 完
2010・6・3
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