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バーチスティラントの魔導師達
裏切り
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ージをめくった。何か、探しているようにも見える。
「どうしたの…、って、ん?」
ぴっと少女は本のある位置を指さした。読め、と言うことである。
「…『如何にして痛めつけ、如何にして殺めるか。全てはあなたの思いのままに。』」
じーっと少年を睨み、早く気付けと視線を送る。少年はその視線には気付いていないのだが。
「『材料さえあればいい。引き裂くも穴をあけるも噛み砕くも、自由である。』…ねえ、もう読むのやめていい?」
萎えた様子で少年が尋ねる。呪術に興味はないし、人に害を与えようなどは思わない。正直、なぜこの本を読まされているか分からない。少女は表情こそ変えなかったが、本を閉じると少年に背を向けた。
「あ、ご、ごめんって…。でも今はそれどころじゃ、」
「……………材料は、血管。」
ここにいるのは少年と少女のみ。そして、自分の声ではないか細い声が発せられた。つまり。
「………今の、ユイ?」
「『引き裂くも穴をあけるも噛み砕くも、自由である。』。私なら、全部やる。」
「うっ…。」
「全部やれば、大量出血は確実。回復魔法での修復には、時間がかかる。その間、ずっとやり続ける。」
「………やめて。」
「場所は不特定。思い浮かべるのは、相手のみ。そうすれば、」
「やめて!!」
「…………。」
何を言っているかは分かった。何が言いたいのかも分かった。それ故、もう聞きたくなかった。
「"ノアル"が、人間の味方に付いたんだろ…?」
"ノアル"。人体の一部を用いる呪術専門の魔導師。ここまでえぐいことをするのは彼らのほかにいない。材料とイメージさえあれば、特定の相手を好きな方法で傷付けることが可能である。
例えば、自分の母親と姉のように。
「多分、皮膚片か何かもあったんだ。それに穴を開ければ、出血はする。」
「………。」
「どう治せばいいの…。もしまだ止まってないなら、僕の魔法じゃ、追いつけない…!!」
「………。」
上の階から、どたどたと慌ただしい足音が聞こえる。その音が少年をより追いつめていた。
「……………幻書なら…。」
「………!?」
「幻書なら、治せる。きっと…。」
場所は分かっている。それならやってみるべきだ。少年は、少女を置いて走り出した。

少女は目を見開いたまま立っていた。別に、少年の行動が無謀だと呆れたわけではない。
ただ、『幻書は司書と読み手以外が使えばどうなるか分からない』という少年の言葉を思い出していただけだ。



結論から言えば、魔法自体は成功した。幻書に失敗などない、否、あり得ないのだから。
ただし、生還できたのは。
「……………っ、ここ、は………?」
「ね……、姉さん!!!」
「レリー!?おい、大丈夫か!!」
「……アレン…………、ウィ、ル…。」
「良かった……姉さん…
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