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逆さの砂時計
解かれる結び目 2
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 私の唇に
 さ……、触っ!?

「ん。おつりだから、これが限界かな? 次へ進むには何が必要だろう?」

 次?
 次って!?
 唇の次ってっ!?

「ば……っ ばかぁああ!!」

 全身から湧き上がる何かで、頭が破裂する。
 今、絶対顔が真っ赤になってるわ。だって頬がすごく熱いもの。
 どくどく、どくどくと、急に血流を弾ませて……っ
 私の心臓を壊すつもりなの!? この男性は!

「とっ、友達に! こういうコト、しないでっ!」
「ふふ……ごめんね?」

 これまでは、何があっても主人だから騎士だからって、真面目な態度しか見せてこなかったのに。
 人目につく場所で友達口調は我慢してくれって言ったばかりのくせに。

 段階を飛ばして、い、いきなり女の子の、は……
 初めての、キス……を、奪うなんて……っ!

 不良だ。
 不良だわ。
 エルンストの不良騎士!

「僕としてはもっと話していたいんだけど……さっき、神殿に客が来てね。大神官様の護衛に就かなきゃいけないんだ。君は自室に戻ったほうが良い」

 ……お客様? 神殿に?
 事前の申請と許諾(きょだく)を何重にもくり返さないと入れないこの神殿に外部から訪ねてくる人がいるなんて。
 珍しいわね。

「分かった。もう少しゆっくりしてから戻るわ。今すぐ部屋に戻ったって、絶対に落ち着けないもの。誰かさんのせいで」
「おや。女神マリア様は誰かさんの行為で御心が揺らいでおられるらしい。これは、誰かさんも期待せずにはいられないですね」

 なに? その嫌みな口調は!

「エルンストの意地悪っ!」
「御前を失礼させていただきます。我が主マリア様」

 きちっと一礼して立ち去るところが、更なる嫌みだわ。
 全身で沸騰した血液をどうしてくれるのよ!
 もうっ!



 ハチミツ色の細く短い髪は、滑らかで綺麗だと思う。
 柔らかく細められる青い目も、実際に実物を見たことはないけど……
 多分、晴れた日の海面って、あんな色をしてるんじゃないかしら?
 騎士のわりに白い肌は陽の光に弱いらしくて、長時間の外部訓練をすると陽焼けやヒリヒリ感が酷くなるってぼやいてたわね。
 物腰は、人間の女性達が抱く理想の騎士像そのものだと、評判は上々。
 だけど線が細いかといえば、そうでもなくて。
 顔立ちや体の造りは、しっかりと芯が通った男性にしか見えない。

 彼は歴とした武人だ。
 神々に剣を捧げた神殿騎士。

 そして、私の幼馴染みで、たった一人の友達。

「……友達、なのに……、な」

 ねえ、エルンスト。
 貴方は友達だわ。
 手作りのブローチを貰えたのは、友達として、すごく嬉しい。
 でも、キスのその先を私
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