暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 2
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ア様」
 きちっと一礼して立ち去る所が更なる嫌味だわ。全身で沸騰した血液をどうしてくれるのよ! もう!


 蜂蜜色の細く短い髪は、滑らかで綺麗だと思う。柔らかく細められる瞳も……見た事は無いけど、晴れた海の青ってあんな色をしてるんじゃないかしら。肌は陽の光に弱いらしくて、長時間の外部訓練をすると日焼けが酷くなるってぼやいてたわね。
 物腰は人間の女性達が抱く理想の騎士像そのものだと評判は上々。だけど、線が細いかと言えばそうでもなくて。顔や体はしっかりと芯の通った男性にしか見えない。彼は歴とした武人だ。神々に剣を捧げた神殿騎士。
 そして、私の幼馴染みで、たった一人の友達。
 「……友達、なのに……な」
 ねぇ、エルンスト。貴方は友達だわ。手作りのブローチを貰えたのはとても嬉しい。
 でも、キスのその先を私に願うって事は、貴方は私を……そういう意味なんでしょう?
 駄目よ。エルンスト。
 私は最後の天神の一族として、神々が示す道を歩まなければいけない。魔王レゾネクトが世界を脅かしている最中に、誰かと結ばれる選択は許されないの。私は貴方を友達として以上に見られない。
 ……見ちゃ駄目なのよ。
 「待つのは悲惨な結果だと解っていて飛び込めるほど、強くも弱くもないのよ。私は」
 キスされて。巧みな言葉に翻弄されて。そういう気持ちに縁遠い私の心は、上を下への大混乱。心臓なんてもう、あまりに過激な動きをするから、痛くて痛くて堪らない。痛すぎて涙が零れ落ちそうよ。
 ねぇ、エルンスト……。私、今になって(ようや)く本当に気付いたわ。貴方が気付かせてくれたの。
 「私は……誰とも恋愛できないのね……」


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