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逆さの砂時計
解かれる結び目 2
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解いて、白い包装紙を丁寧に取り去る。
 宝箱のような形の小箱から現れたのは、広げた片翼を模した銀のブローチ。
 付け根の辺りに丸く填め込まれた薄水色の宝石は……もしかして私の瞳と同じ色? お揃い?
 「素敵! とても綺麗だわ」
 「手作りだから不格好だけど、これで許してくれるかな?」
 手作り!? 全然そんな風に見えない。職人が手掛けた作品と比べても遜色無い仕上がりだわ。
 というか、やっぱりエルンスト自身で結んだのね。薄紅色のリボン。
 「手作りならお釣りが必要なくらいよ! ありがとう、エルンスト」
 翼の柔らかさを表現する彫りの一線一線に細やかな(こだわ)りを感じる。私の手で握って包み込める小ささなのに……こんな器用さがエルンストにあるなんて知らなかった。
 直接手に取ると、ちょっと重い。でもひんやりした感触が気持ち良い。
 何かのついでに作ったのかしら。それとも、私の為にわざわざ作ったのかな?
 だとしたら凄く嬉しい。神々への貢ぎ物が結果として私に回って来たりはするけど、私自身が贈り物を貰うなんて随分久しぶりだもの。
 「……お釣りをくれるなら、少し上を向いて?」
 上? 何かあるのかしら……って  え。
 「……っえぇ!? 何して……っ」
 エルンストの唇が、私の唇に、さ、触っ……!?
 「ふむ。お釣りだから、これが限界かな? 次に進むには何が必要だろう」
 次? 次って……唇の次って……っ!?
 「ば……っ バカぁ!!」
 全身から沸き上がる何かで頭が破裂する。
 今、絶対顔が真っ赤になってるわ。だって頬が凄く熱いもの。どくどく、どくどくと急に弾ませて……私の心臓を壊すつもりなの、この男性は!
 「と、友達にこういう事、しないでっ!」
 「ふふ……ごめんね?」
 これまでは殆ど主人だ騎士だって真面目な態度しか見せてなかったのに。人目に付く場所で友達口調は我慢してくれって言ったばかりのくせに。段階飛ばしでいきなり女の子の、は……初めての、キス……を奪うなんて……っ!
 不良だ。不良だわ。エルンストの不良騎士!
 「僕としてはもっと話してたいんだけど……さっき神殿に客が来てね。大神官様の護衛に就かなきゃいけないんだ。君は自室に戻ってたほうが良い」
 ……お客様? 神殿に? 事前の申請と許諾を何重も繰り返さないと入れない神殿に、外部から訪ねて来る人がいるなんて。珍しい。
 「……分かった。もう少しゆっくりしてから戻るわ。今戻っても絶対落ち着けないもの。誰かさんの所為で。」
 「おや。女神マリア様は、誰かさんの行為で御心が揺らいでおられるらしい。これは誰かさんも期待せずにはいられないですね」
 なに? その嫌味な口調は!
 「エルンストの意地悪!」
 「御前を失礼させていただきます。我が主マリ
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