巻ノ十二 都その六
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「城下町ならば」
「しかし都はな」
「基本壁に囲まれております」
今はもう朽ち果てて忘れられているに等しいがだ。
「ですから他の町の様に広がることが出来ませぬ」
「昔からそうであるな」
「小田原城もそうですが」
「北条氏のあの城か」
「はい、あの城は町を城壁や堀で囲んでおります」
その為非常に大きな城になっている、それで天下に知られている城なのだ。
「あの城も城の外から出られませぬ」
「そして都もじゃな」
「中からは出られませぬ」
「町がな」
「ですからこの場合厄介なのです」
人が増え過ぎると、というのだ。
「本朝では珍しい形ですが」
「明ではああした町ばかりと聞くがな」
「何でも南蛮でもそうだとか」
「あちらでもか」
「何でも本朝以外の国では。天竺でもです」
都の様にというのだ。
「城と町は同じものでありまして」
「そしてじゃな」
「町は壁に囲まれそれが城になっています」
「そこが違うな」
「左様です」
「そして本朝では都や小田原がじゃな」
「そうした町で。広がりにくいのです」
こう幸村に話すのだった。
「それ故にこれから羽柴殿が都をどう治められるかがです」
「見るべきものじゃな」
「そうだと思います」
「そうじゃな。町をどうするかもまた政」
「田畑を耕し堤や橋を築くのと同じく」
「それが出来ずして天下人にはなれぬか」
「政なくして天下泰平はありませぬ」
筧はこのことは断言した。
「それ故にです」
「羽柴殿も政次第か」
「戦fが強くて天下を取れぬのならば」
それだけでだ、ことを成せるのならというのだ。
「木曽義仲公はそのまま天下人になっていました」
「旭将軍のままか」
「そうなっていました」
「そうじゃな、義仲公は戦は強かったが」
「政には疎かったです」
特にその駆け引きにだ、その為後白河法皇や源頼朝に翻弄されて無残な末路を迎えたのである。このことは平家物語にある。
「それ故にです」
「天下を握り続けられなかった」
「ですから」
「政じゃな」
「羽柴殿もそれ次第です、そして」
「我等真田家もじゃな」
「左様です」
筧は幸村に顔を向けて答えた。
「そのことは殿も」
「無論じゃ、だから今もな」
「都のことを話されましたな」
「よき政なくして栄えはない」
幸村は言い切った。
「まさにな」
「その通りであります」
「だからじゃ、父上は上田をよく治められてじゃ」
「殿もまた」
「政のことも学んでおる」
「それでこそ真の武士です」
政も知ってこそというのだ。
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