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逆さの砂時計
向かう先は
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瞳を真ん丸に見開いて。くびれの少ない子供特有の柔肌を余す所なく空気に晒して。
 少女は其処に、ペタンと座り込んだ。
 「え……えぇっ!?」
 少女は酷く慌てた様子で自らの体をペタペタと触って確認する。
 両手両足を忙しなく見比べ、肩を頬に寄せて、最後に頭部の輪郭をなぞって髪をくしゃくしゃと掻く。
 「何で!? どうして私に実体が!?」
 「えーと……」
 自分でそうさせておいてなんだが、あまりに予想外な形が現れたので、フィレスも目を真ん丸にした。
 非現実的な何かを形にしたら幼い女の子?
 そんな莫迦なと目蓋を擦ってみるが、少女は変わらぬ姿でキョロキョロしている。
 「…………とりあえず、これ、着ますか?」
 「え? あ、えー……と ありが、とう?」
 丈の長い上着を脱いで、立ち上がった少女に渡す。
 彼女にはかなり大きいが、肘と膝の辺りでそれぞれ端を巻き上げてリボン縛りにすれば、なんとか服の体裁は保てた。
 着付けを終えて少し落ち着いた少女が、ふとフィレスを見上げてまた目を丸くする。
 「翼!? 羽根!?」
 「あー……、はい」
 其処は普通に驚くのかと苦笑した。
 しかし、何故だろう。少女の顔に見覚えある気がするのは。
 自宅で見た女性と同じ色彩の所為か?
 「本物の女神が居るなんて。ああ、だから私の羽根が……」
 「羽根? これですか?」
 ネックレスの羽根を手に取ると、少女はこくりと頷いた。
 「その羽根からは、弱いけど私の力を感じる。私の翼の一部だわ。……そう。その羽根が貴女を此処に呼んだんですね」
 「……そのようですね」
 ネックレスから離したフィレスの手を、少女が真剣な顔で引く。
 「私はマリア。天神(てんじん)の一族で空間を司る女神です。貴女は?」
 「フィレスと申します。実はよく解っていないのですが、もしよろしければ状況整理にご協力いただけませんか?」
 「ええ。私が知る限りの総てをお話します。ですからどうか、貴女の力をお貸しください、フィレス様」
 「私にできる事であれば」
 フィレスはこれまでの経緯を語る。それを受けたマリアも、自分の事、アリアの事、レゾネクトの事、神々の事……あらゆる情報を開示した。
 結果フィレスが知った世界は想像以上に現実離れしていて、ただでさえ混乱気味の脳内を更に掻き回してくれた。
 自分達の常識は一旦忘れろと言った師範の判断はやはり正しい。人間としての自分に固執していると、とてもじゃないが感情処理が追い付かない。
 「つまり、私の部屋に現れたのは結晶に宿った貴女自身で、夢の中で泣いていたのも、やはり貴女自身だと」
 「ええ。あの結晶は、時間を操る力が僅かに残っていた彼の眼球を元に私の意思を固定した鍵。この私も二人の血液を混ぜて作った時空に意思
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