ステージ1 ひよっこ、世にはばかる!
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しかし、歓声は巻き起こらない。客は皆、金剛の圧倒的な勝利と、他のアイドルがその未来に絶望しまともなパフォーマンスの出来なくなることを決めつけているからだ。
「……イエーイ!って誰も言わないの?」
その沈黙を破ったのは、舞菜だった。
「折角だから言おうよ。イエーイ!イエーイ!」
……
「盛り上がらないなぁ」
舞菜はすねたように口をすぼめた。
「いくぞ野郎共アマ共!コンサートバトル、開幕だぁぁああぁぁぁぁああ!」
「おぉーーっ!」
舞菜は無理矢理盛り上げようとしたが、客は反応しなかった。
「先陣を切るのは、四万十 最上だぁああ!」
「風邪なので休みます」
「そ、そうか。残念だな。では次のアイドル、富士 赤城いぃぃぃい!」
「祖父の十三回忌なので休みます」
「それは前々から分かってただろ?と、とにかく、次の……」
ジャーン!
「あ、今ので曲終わりました。私の番終わりっす」
「ええい!次!」
「じゃんけんぽい。じゃあ、またねー」
「次!」
「頭痛の痛みがペインペインで……」
次!
次!
次!
(……こんなの、アイドルじゃない。アイドルは、みんなの心を救うものなのに……)
戦わない者、戦ったふりをする者、その人達を見て、舞菜は逆に意志が硬くなった。
(みんなを、心に巣食ってる諦めの気持ちから、私が救ってみせる!)
「次はまともに頼むぞー!峰山堂 こんごおおぉぉおぉぉおぉおおう!」
シン……
その言葉を聞いた途端、元々静かだった会場が一気に静まり返った。
パッ
スポットライトが一筋、金剛を照らす。
「……」
金剛は全く動かない。
(え……?)
金剛は動かず、曲も何も流れない。
(…………なんでだろ?何もしてないのに、凄い迫力)
金剛は、その動かない様で、全ての客を、判定員を、そして、対戦相手を圧倒していた。
その様子が2分続いた後、金剛はゆらりと左腕を伸ばした。
そして親指を下に向けた、サムズアップを上下逆にしたような手を、一気に振り下ろした。
ズン!!
(!!!!)
舞菜は一瞬、呼吸が止まった。
見ると周りの人も、一瞬の圧力に撃たれているようだ。
(強い…………、この人は…………、本物の………………アイドルだ)
「だから言ったでしょ。尻尾巻いて逃げなさいって」
久夜の生気の無い目が舞菜を見つめる。
「……私、」
「さぁさぁさぁ!次は期待の新星、二ノ風ぇええぇぇえ 舞菜あぁあぁあぁあああ!」
舞菜はフラフラと舞台の中央に上がる。
スポットライトが舞菜を照らす。
「……あれぇ?どうしたぁ?舞菜ぁ?」
(私……棄権しよう。棄権して、お母さんの言う通り、実家のヘチマ農家を継ごう……)
舞菜の心は空気の
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