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ONE PIECE《エピソードオブ・アンカー》
episode16
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アーロンがアンカーに対して特別な感情を抱いているのは、船員全員が気付いていた。気付いていないのはアンカーだけだ。それも無知だから仕方がない。


「船長......ちょっと、いいですか?」


 船医の神妙な面持ちに察し、短い返事の後、アンカーの部屋を後にし船長室へと赴いた。
 その場には既にハチやクロオビなど、アーロンと昔からつるんでいる面々が揃っていた。彼らも船医からアンカーの急変を聞き、その容態を説明してもらうために集められていたのである。


「船長、命を落とす覚悟で申します」

「聞いてやる」

「アンカーを船から降ろすべきです!」


 空気が張り詰めた。
 その発言がどういう意味を持つのか...。分かっているからこそ、船医は“命を落とす覚悟で”と最初に言ったのだ。それがあったからこそ、アーロンは怒りを我慢出来ているのである。
 しかし、それが顔に出ていない訳もなく、ブチギレ寸前の表情から目を逸らさない船医の覚悟は本物と見て取れた。


「......理由は」

「理由は、アンカーを殺したくないからです」

「なに....?」

「このまま海賊を続けていれば、アンカーは確実に死にます。
船長はお忘れですか? 彼女は、本人は認めておらずとも半分は人間なのです。いくら体が丈夫でも、人間の心臓では限界値を超えてしまう!」


 度重なる戦闘でアンカーの心臓は悲鳴を上げていた。体が丈夫過ぎるが故に、それに気付いた時にはもう手遅れだった。もう、一人で歩くのも出来ない。歩くだけで心拍数が上がり、息切れを起こし、今回のように過呼吸を引き起こす可能性もある。最悪、死ぬ場合も考えられると船医は言い切った。


「......」

「船長! 彼女を死なせたくないのなら、ここで船から降ろすべきです! 船長! 船長!!」

「......ッ」


 何も言い出せないでいた。
 アンカーを側に置いておきたい己と、アンカーを死なせたくない己とが激しい口論を繰り返す。アーロンは顔を手で覆って、周りに表情を悟られないように隠した。
 一人で考えても結論は出せない。そう思ったアーロンは、再びアンカーのもとへと赴くのだった。
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