兄弟の章
Y
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てくれたのであった。
ジョージは馬車からその光景を眺め、感動のあまり涙ぐんでしまった。
温かな人達に見送られながら、馬車はジョージを乗せて、この小さな村を後にしたのであった。
旅程は小さな村を二つと、中程に発展した街を三つ経由する本道を通るのが一般的である。
しかし、今回ジョージは道を少し変更し、街を迂回する山道を使うことにした。
名前が知られていると厄介だからである。
二日も旅程が延びてしまうが、物好きな貴族に呼び出されるよりはましと言うものであった。
メルテの村を出てから三日間は、何事もなく平穏に過ぎて行った。
「このまま無事に行けば、後六日程でサッハルに戻れるな。」
雪は残るものの、春も半ばの朗らかな陽気の中、彼は馬車の中で一人呟いた。
まるで目の前にケインが居るかのように…。
馬車はドナという街の外郭にあたる脇道に入った。
辺りの景色は緑に覆われ、近くには谷川があるようである。
「今日は小さな村に厄介になるとしよう。前のコバイユの村では、音楽を大層気に入ってくれた。この村もそうであると良いのだけどな…。」
暖かな陽射しを見上げ、そう呟いた刹那…。
― ガタッ!ゴゥッ!! ―
馬のいななきと共に、大きな衝撃がジョージを襲った。
「な…っ!」
彼はどうすることも出来ずにバランスを崩した。そして浮遊感に包まれたかと思った一瞬、彼の意識は闇に葬られたのであった…。
ジョージの乗っていた馬車は、予定通り山道に入っていた。だが山道に入って少しすると、こともあろうに馭者が居眠りをしていたのである。
馬は弛んだ手綱のお陰で道を誤り、そのまま谷へと落下してしまったのであった。
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