暁 〜小説投稿サイト〜
SNOW ROSE
兄弟の章
Y
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
てくれたのであった。
 ジョージは馬車からその光景を眺め、感動のあまり涙ぐんでしまった。
 温かな人達に見送られながら、馬車はジョージを乗せて、この小さな村を後にしたのであった。

 旅程は小さな村を二つと、中程に発展した街を三つ経由する本道を通るのが一般的である。
 しかし、今回ジョージは道を少し変更し、街を迂回する山道を使うことにした。
 名前が知られていると厄介だからである。
 二日も旅程が延びてしまうが、物好きな貴族に呼び出されるよりはましと言うものであった。
 メルテの村を出てから三日間は、何事もなく平穏に過ぎて行った。
「このまま無事に行けば、後六日程でサッハルに戻れるな。」
 雪は残るものの、春も半ばの朗らかな陽気の中、彼は馬車の中で一人呟いた。
 まるで目の前にケインが居るかのように…。
 馬車はドナという街の外郭にあたる脇道に入った。
 辺りの景色は緑に覆われ、近くには谷川があるようである。
「今日は小さな村に厄介になるとしよう。前のコバイユの村では、音楽を大層気に入ってくれた。この村もそうであると良いのだけどな…。」
 暖かな陽射しを見上げ、そう呟いた刹那…。

― ガタッ!ゴゥッ!! ―

 馬のいななきと共に、大きな衝撃がジョージを襲った。
「な…っ!」
 彼はどうすることも出来ずにバランスを崩した。そして浮遊感に包まれたかと思った一瞬、彼の意識は闇に葬られたのであった…。
 ジョージの乗っていた馬車は、予定通り山道に入っていた。だが山道に入って少しすると、こともあろうに馭者が居眠りをしていたのである。
 馬は弛んだ手綱のお陰で道を誤り、そのまま谷へと落下してしまったのであった。




[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ