兄弟の章
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ていた。
少し寂しさを感じたジョージであったが、今はそんな余裕なぞない。
「全く…。先ずはどんな材料が…と、ラム酒漬けのレーズンがあるか。アーモンドは一部プードルにするかな。メルデン、アーモンド100グラムをオーブンで湿気を飛ばしてから冷まし、挽いて粉にしておいてくれ。」
待ってましたとばかりに、メルデンは「はい!」と返事をし、アーモンドの目方を計り始めた。
「後は…。あ、チョコレートまであるじゃないか!こんな高価なもの、よく仕入れられたな…。」
そう言いながらも、彼は頭の中で材料を合わせていた。
「あまり華美なものは作れないからなぁ…。」
そう考えて出てきたものがこれである。
1、ブラックベリーとチョコレートのケーキ
2、アップルとレーズン、ミントを使ったパイ
3、レモンとオレンジのタルト
4、クルミと刻みチョコレートを使ったマフィン
5、ダックワース
6、オレンジピールを使ったガレット
7、干し果実とパンプキンシードのパウンド
以上七点。
「パイ生地の作りおきがあって良かった…。冬期しか出来ないからなぁ。あ、メルデン、ついでにクルミをローストしておいて。」
ジョージは指示を出しながら、レモンとオレンジの下処理に入った。
「間に合わせないと。メルデン、干し果実を煮て冷ましておいて。」
「はい!」
この日、厨房の明かりは深夜まで灯っていた。
翌日の夕刻。
男爵一行が到着するまで、内部では戦いが続いていた。料理もそうだが、会場としてのセッティングに時間を取られたためである。
四人掛けのテーブルを十台に、男爵の家族五人の使うテーブルが一つ。
それから、店からの哀悼の意をこめた白薔薇の造花を飾り台に置き、やっと完成した。
「それでは皆さん、暫らくしたら男爵一行が到着する。くれぐれも粗相のないようにお願いします。では、各自持ち場へ入るように。」
オーナーがそう言うや、集まっていた者達は「はいっ!」と返事をし、各持ち場へとついた。無論、ジョージとメルデンは製菓場である。
ジョージがこの場所を単独で与えられたのには理由がある。
実は、この部門には専門の人材が就いてなかった。要はパティシェ不在の店なのだ。
以前、製菓場はその日に応じて誰かが補うようになっていて、誰も手が開かない場合はオーナー自らが粉を捏ねていたのだ。
無論、そんな大層なものは作ってなかった。
そこで目を付けられたのがジョージだったのであった。
「先輩…大丈夫ですかねぇ…。」
メルデンが気弱に呟いた。
実は彼、かなり内気な性格だったりもする。その反面、かなりの美男子でもあった。
ジョージの顔立ちもかなり良いのであるが、メルデンはその上をいった。
だが…この気質のせいか、好きな人に告白
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