第5話「狂人は何事にも動じず破滅に微笑む」
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こいつァ駄目だ。女に渡すモンだからな」
「ほほう、女にプレゼントするとはアニキも中々優しいじゃないか。オレはますます尊敬する。……なるほど、プレゼントか。いいな!プレゼントは互いの絆を深める象徴であり、形として残された思い出は消えることなく心に在り続け、人生を楽しく悲しく盛り上げてくれるまさに最高の贈り物だ!」
「……ああ、たしかにな」
ハイテンションに謳うグラハムの傍らで、誰に言うでもなく高杉は呟く。
赤い紅い水に満たされた小瓶を見据え、微笑みながら。
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「思い出好きな奴にはうってつけの《プレゼント(贈り物)》だ」
* * *
――楽しい、楽しい話をしよう。
廃倉庫で少年は二つの衝撃を受けた。
一つは『破壊』を愉しむ最中に突如登場した銀髪の侍。
面白い男だった。
所々まるまった毛先の髪。腑抜けたような眼。そいつが持つのは古くさい軟弱そうな木の棒。
なのに、二度も愛用のモンキーレンチを受け止めた。
とっても気に入らない奴だが、嫌いじゃない。
銀髪の男に不思議と妙な親近感が湧くのはなぜだろうか。
出会うのがもう少し早かったら、あの男についていったかもしれない。
だが少年の心を捕えたのは片目の包帯の男。
『破壊される地面。崩壊していく足場。朽ちる地上』
世界は巨大なレンチだけでもろく壊されていく。
呆気なさすぎる。だが、それがどうしようもない『快感』だった。
というより、それでしか何も感じられない。
少年にとって『破壊』が全てだった。
だが、狂気的な笑顔は優美な足に蹴り飛ばされ――少年の世界は変わった。
豊満な胸と大人の色気をあやなす美しさ。
それに似合わない、女性にしては短い髪と威勢のある鋭い眼。
二つの要素は全く噛み合ってないが、そのズレこそが彼女の魅力を最大限に惹きたてる。
まさに女性らしい女性の強さに満ち溢れた《ひと(女性)》だ。
もう痛みが消えた頬に手をそえて、少年は恍惚に微笑む。
彼女は踊るような華麗な動きで闘っていた。
優雅に飛ぶ姿は、まるでこの国の象徴である『桜』が舞う様そのもの。
銀をなびかせて桜が舞う――《シルバーチェリー(銀桜)》。
――高杉のアニキ。
――銀髪の侍。
――《シルバーチェリー(銀桜)》
――おもしろい。ワクワクが止まらねェな
少年はうたう。
悦びと破壊にまみれた詩(うた)を楽しそうに。
――この国の人間はおもしろい。
――愉快だね。実に実に愉快になってきた。
――もっと愉快な話を紡ぎ出すために、オレがやらなきゃいけないコトと言えばやっぱり……
――壊すこと、だよな。
=終=
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