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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十四話  走為上
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ようにと命じると直ぐにボロディン本部長の姿が映った。互いに礼を交わすと本部長が口を開いた。

『イゼルローン方面から来襲した帝国軍の進撃が止まりました』
艦橋がざわめく。ビュコック司令長官が“静かに”と窘めた。
「ではヤン提督が?」
『ええ、帝国軍に接触したようです。帝国軍は前後から挟撃されるのを恐れシヴァ星域において集結しています』
進撃が止まった、悪くない。ヤン提督が追い付いてきた、これも悪くない。少し運が上向いて来たか。

『そちらの状況は如何ですか? 今何処に?』
「ランテマリオを抜けジャムシードに向かっているところです。後一週間ほどでジャムシードに到達するでしょう」
『後一週間……』
ビュコック司令長官の言葉にボロディン本部長が頷いた。

『帝国軍は?』
「追って来てはいますが戦闘にはなっていません」
『振り切ったと?』
司令長官が首を横に振った。
「そこまでは。何とか捉まらずにいる、そんなところですな」
『そうですか』
本部長が頷きながら大きく息を吐く。思うようにいかない、そんな感じだ。

『出来れば帝国軍をジャムシード星域にまで誘引したいと思いますが同盟軍は二個艦隊、帝国軍の半分にも及びません。場合によってはシヴァ星域にまで行って貰う事になりそうです』
「已むを得んでしょう。無理をすれば各個撃破される危険が有ります」
帝国軍はその各個撃破を狙って来る筈だ。無理は出来ない。だがそれは……。

「本部長閣下」
『何かな、総参謀長』
「シヴァ星域方面、ジャムシード星域方面にそれぞれ補給部隊の手配をお願いします」
『……』
ビュコック司令長官が頷くのが見えた。フェザーン方面軍に元々配備された補給部隊は速度が遅いために已むを得ずとはいえ置き去りにせざるを得なかった。帝国軍に追い付かれたら無理をせずに降伏しろと命じたが……。

「小官からもお願いします。このままではイゼルローン方面の帝国軍とは戦えても後を追ってくるフェザーン方面の帝国軍とは武器弾薬の不足から戦えない可能性が有ります。決戦場が確定しない以上両方に必要です」
『分かりました、手配しましょう。ヤン提督、カールセン提督も補給を必要とする筈です。彼らの分も用意しましょう』

その後はハイネセンの様子について本部長から説明が有って通信は終わった。ハイネセンはパニックとまでは行かないがやはり混乱が生じているらしい。もっとも宇宙艦隊がほぼ無傷でハイネセン防衛のために戻ろうとしている事も分かっている。ハイネセンの市民は我々が帝国軍を撃破する事に一縷の望みを抱いている様だ。その他の自治星系は殆どの有人惑星が無防備宣言を出している。そして帝国軍がハイネセンを目指している事、自分達を攻撃しようとしない事を理解して落ち着いているらしい。酷い混乱は無
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