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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十四話  走為上
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が頷いた。



帝国暦 490年 4月 1日   帝国軍総旗艦ロキ  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



レンネンカンプ、ケンプ、アイゼナッハ、ビッテンフェルト、ミュラーが気の抜けた様な顔をしている。軍人にとって戦わないというのはやっぱり不本意なのかな。まあこれが最後の戦いだろうからな、心に期待する物が有るのかもしれない。分からないでもない。

でもね、俺はヤンと戦いたくないんだ。戦後の事を考えてとは言ってるけど本音はヤンが怖いんだよ。本当はイゼルローンで降伏させる予定だったんだがな、上手く逃げられた。こっちの考えを見抜かれたらしい。やっぱりヤンはミラクルヤンだ。何を仕出かすか分からない怖さが有る。例え一個艦隊の指揮官に過ぎなくても油断するべきじゃないと思う。

三十六計逃げるに如かずという言葉も有るが危険だと思うなら無理せずに戦いを避けるべきだ。勝てないなら戦わないように工夫するべきだ。戦わなければ負ける事は無い。その上で戦わずして勝つ方法を考える。今回は同盟軍の防衛作戦は破綻しているし兵力も劣っている。一生懸命態勢を立て直そうとしているが無理が有る。直接戦わなくても勝てる条件は揃っているんだ。危険を冒す必要は無い。

言い訳するつもりは無いが指揮官は臆病なくらいで丁度いいんだ。但し、周囲には臆病では無く慎重だと思わせる事が必要だ。そうでなければ侮りを受ける事になる。上に立つのも容易じゃないよ、本心なんて滅多に出せない、常に理想の上官を演じているんだからな。役者にでもなった気分だ。

ラインハルトはそういうのは出来なかったな。戦いを避ける事も出来なかったし戦後の事を考える事も無かったと思う。演じるなんて事も無かっただろう。天才とか英雄っていうのはそういうものなんだろうと思う。演じてなくても英雄を演じ周囲を魅了する、だから誰も真似出来ない。俺みたいな臆病な小市民には到底無理だ、真似する気もないけどな。



宇宙暦 799年 4月 2日  同盟軍総旗艦リオ・グランデ  ドワイト・グリーンヒル



総旗艦リオ・グランデの艦橋は張り詰めた緊張感と奇妙な明るさが混在していた。緊張感はイゼルローン方面の帝国軍がハイネセンに迫っている事がもたらし明るさはフェザーン方面の帝国軍の追撃を何とか振り切れそうだという希望がもたらしている。状況は厳しいが一筋の光明を見ているのだろう。

その一筋の光明にすがりたい気持ちは理解できる。しかし状況は良くない。帝国軍の大軍に同盟領奥深くまで踏み込まれてしまった。そしてこちらの防衛態勢はボロボロと言って良い。何とか作り上げた迎撃案も綱渡りのようなものだ。果たして上手くいくのか……。

「ハイネセンより通信です」
オペレーターの声が上がる。ビュコック司令長官がスクリーンに映す
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