静謐の泉
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
そろそろ貰っていこうかと思ってな。その代わり、お前には一時の休息をやろう。ゆっくり休むと良い。偽りの創造神に愛された神父。いや、魔法使いクロスツェル」
体から腕が引き抜かれていくのを感じる。
痛みを感じないのは驚きのせいなのか、実際そういうものなのか。
なんにせよ、苦しまなくて済むのは多少気が楽で、助かります。
「休みなんて、もう少しだけ待っていただければ……勝手に、訪れたんですけど……、ね……」
体から力が抜ける。
いや、引っ張られているのだろうか。
腕が完全に引き抜かれる寸前、ベゼドラの声が聞こえた気がする。
……ほら、ね?
先手を打っておいて、正解だったでしょう?
貴方も、面倒くさいとか言ってないで、少しは先を読む努力をしなさい。
あとは お願いします ね ベゼドラ
前方へ傾いた体は、とすん、と音を立てて水面に打ちつけられ。
泉の内側へと飲み込まれるように滑り落ちた。
それは、ほんの数秒間の出来事。
水上に浮かぶもう一人のクロスツェルが手に持っている、小さな布袋。
そこから取り出された薄い水色の宝石を見て、リースは目を見開いた。
それは、聖天女に近い力なんかじゃない。
それは、ただの宝石なんかじゃない。
「……聖天女、さま!?」
かつて勇者達と共に泉を訪れた、神々と人間世界とを繋ぐ巫で。
天神の一族、最後の一柱で。
精霊族に人間の言葉を教えた、最初の女神。
古の昔に聖天女と称されていた、白金色の髪と薄い水色の目を持つ少女。
現代この世界には居ない筈の『彼女』の意思、そのものだった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ