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SAO−銀ノ月−
第八十四話
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てやるんだ。あの浮遊城にまだ囚われてる連中に」

 あの浮遊城は、もはや世間からも忘れられるほどになった。今更、まだあのデスゲームに囚われている者がいるなら、叩きのめして言ってやる――『SAOはもう終わったんだ』、と。そんな決意が伝わったのか、里香の表情が和らぎ小さく笑い、いつもの調子が彼女に戻る。

「ありがと、正直に言ってくれて。あんたらのことだから心配なんてしてないけど、まあ無理はしないように。……分かった?」

「ああ」

 明るく振る舞う彼女に、こうして何度送り出されてきたことだろう。そんなことを考えていると、頼んでいたコーヒーがなくなっていたことに気がつく。

「色々準備もあるでしょ? ごめんね、呼びだしちゃって」

 里香の方も飲みきっていたようで、そう言って彼女は席を立つ。会計を済ませようとする彼女を足早に追いつくと、こちらが先にレジへと到着し、コーヒー二つ分の値段をレジを担当していた店員へと払う。

「別にこれくらいいいのよ?」

「こういうのは見栄なんだ、見栄。やらせてくれって」

「……見栄っ張り」

 里香とそんな会話をしながら喫茶店を出ると、肌寒い感覚が肌を支配していく。里香は一瞬だけ強く俺の手を握ると、偶然か、俺の目的地である病院とは逆方向に歩いていく。コートのポケットに手を突っ込み、手の温もりを維持するかのようにしながら。

「それじゃ翔希、負けたら承知しないからね!」

「もちろん」

 送っていこうか――と言おうかとも思ったが、里香は恐らくその申し出を拒否することだろう。彼女の気遣いに感謝しながら、俺は病院に向かうことにした……もちろん、あの銃と硝煙の世界に行くために。

「……転ぶなよ、里香!」

 ……最後に。ポケットに手を入れたままの里香に振り向くと、白い息を吐きながらそうして声をかける。突然声をかけられた里香は驚いたようにこちらを見ており、その驚いた様子を目に焼き付けながら、俺は病院へと向かっていった。


 所沢総合病院。あの浮遊城に行く前は、明日奈のことや今回のことなどで、何度も足を運ぶことになるとは夢にも思わず。里香や友人たちと会えただけでなく、これもあの浮遊城がもたらしてくれたものなのだろうか――などと、至極くだらないことを考えながら、病院のドアをくぐっていく。

 さらにGGOへログインする為の機材が置いてある部屋へと歩いていくと、その部屋から二人の男女の話し声が聞こえてきていた。どちらも見知った声ではあったものの、少々入りづらいことは確かなので、自動ドアを開ける前にノックすると――上擦った男の声で、「ど、どうぞ!」という声が聞こえてきたので、遠慮なく自動ドアを開ける。

「な、なんだ……翔希かよ。驚かせるなって」

 室内にい
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