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逆さの砂時計
異国の大地 3
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 リーフは少しの間リオと無言で向き合って……
 「クロスツェルと、行く」
 こくりと頭を下げた。
 「では、朝食を頂いたら直ぐに発ちます。リーフはリースと一緒に此方へ」
 箱に手を差し出して、二人をコートのポケットに招き入れる。リオは手を振って「またね」と笑った。


 「あれ? リーフは?」
 食堂に向かう途中、マクバレンさんの部屋にリオが入った箱を返した。ひとり欠けた中を覗いて首を傾げる。
 「クロスツェルの部屋でリースと話してるわ。野暮な事を尋かないで」
 「おお! 久しぶりの仲間だからね。ゆっくり話したいのも当然か。それにしても、野暮なんて言葉も使えるとは……」
 キラキラと嬉しそうに笑うマクバレンさん達と適当にあしらうリオ。
 微笑ましい光景ではあるが、眺めている時間は無い。
 「では、また」
 「あ、はい。後ほど!」
 一礼して彼らの部屋を後にする。コートを着たままの自分に違和感を抱いてくれなくて良かった。
 急いで食事を済ませ、忙しいお客様だねぇと女将さんに笑われながらベゼドラと一緒に宿を出る。
 まだ昼前の活動時間。人の往来はそこそこあるが、村の規模では賑わいと表現するほどでもない。
 敢えて見張りの人間に挨拶を残して、足早に村を立ち去った。こうしておけば彼らが気付いた時、一足先に向かったのだと伝わるだろう。リオが説明しやすくなると良いのだけど。
 「道沿いに歩いて行き、村が見えなくなった所で森に入りましょう」
 「へーへー」
 時間が時間だけに道の途中では人と擦れ違うだろう。深い森の中なら跳ぶ瞬間を見られる心配はまず無い。(しばら)く早足で進み……周囲をよく確認してから、森の中へと踏み入った。
 適当な木に飛び乗り、枝から枝へと低く移動を続けて。
 人間が入った痕跡が無い場所で、リース達が示す方角へと高く跳躍する。
 見下ろした大地は先日まで居た国とは違う領土で。
 しかし、目に見える境界線などは見当たらない。
 何処までも続く、繋がった世界。
 かつてのアリアが愛して護った、生命の揺りかご。
 『生きるもの総て! 大好きですッッ!!』
 大小様々な差異はあるにしても、多分マクバレンさんの精神はアリアの気持ちに近いのだろう。
 『貴方達が見て来た世界は!? どんな風に見えましたか!? 美しいでしょう!!』
 興奮して飛び出したらしい彼の言葉に微笑む。
 「……そうですね」
 世界は命の輝きに満ちてとても美しい。
 
 儚いほどに。


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