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逆さの砂時計
異国の大地 3
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わせてますが、中には僅かな気温の変化で死んでしまうものもいます。元々の環境に異物を一つ持ち込んだだけでその周辺の生態系が崩れ、複数の種族が絶えた実例もあります。なので、種の保持を目的とする私達には非常に繊細な気配りが必要とされているのです」
 「ああ。それで皆さん、髪を短くされたり纏めていたりするのですね」
 ベゼドラと自分とマクバレンさんの数歩後ろを黙々と歩いている四人を肩越しに振り向けば、同時にサッと顔を背けられた。
 彼らも精霊に大きな関心を寄せているのは痛いくらい伝わって来るのだが、言葉を交わせる存在総てが苦手なのだとか。
 つまり、リーフやリオとも距離を縮められないままだ。
 精霊にしてみれば、不用意に近付かれるよりは気楽だというが……。
 「髪だけではありませんよ。何処にどんな種が居るか分かったものではありませんし。服もブーツもバッグもこの国の商人から事前に買い求めておき、役所で着替えてから此方の土地を踏みました。百歩の道も心構えから。基本中の基本です。クロスツェルさんも少ない荷物で旅をされている辺り、大変素晴らしい!」
 「ありがとうございます」
 軽いほうが楽だから。それだけの理由で、手に持っているのは黒い本一冊のみ。
 まさかそれを褒められるとは思わなかった。


 「あ、見てください、クロスツェルさん! 村に着いたようですよ」
 「そのようですね」
 一晩歩き通した末に、木造建築主体で構成されている小さな村に辿り着いた。
 見張りは居たが、村を囲む外壁が無い。安全性に問題は無いのだろうか。
 研究員の皆さんは少しも疲れた様子を見せずに、今後の進行予定を立てる目的で宿を取る。自分達も隣の部屋を借り、とりあえず食事はしておく流れになった。国境付近だけあって、この宿では向こうの国の言葉が通じるらしい。ちょっとありがたい。
 部屋に入る直前
 「マクバレン。私達、クロスツェルのほうに行きたい」
 と、精霊達が揃って訴えたので、研究員が衝撃を受けてさめざめと泣き出してしまう。
 「一月も一緒に居たのに!! やはり見た目か! 見た目が重要な乙女ポイントなのか!? 綺麗じゃないお兄さんは嫌いなのですかーっ!」
 などと廊下で総崩れされても、宿の方々に迷惑なのでは……。
 ベゼドラは我関せずを貫いて、早速ベッドでごろ寝している。
 「別にっ……なんでも良いから、クロスツェルの部屋に行かせて!」
 何かを強く要望されたのは初めてなのか、彼らは一瞬キョトンとして……仕方なさそうに頷く。
 「お願いします」
 「……はい」
 マクバレンさんから精霊達を預かり、それぞれが部屋に入った途端。分かりやすい泣き声が聞こえてきた。
 「……ずっとあの調子だったのですか?」
 「そう。とっっても鬱陶しいでしょう?」
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