異国の大地 2
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「其処に……精霊が居ませんか？」
精霊。
アリア信仰の神父であった自分の耳に馴染みが無いその名称は、真実がどうあれ、恐らく現代に於て宗教そのものと大きな関わりを持っていない。
仮に人間がその名前を認知しているとしたら、それは多分幻想……現実にはありえない、存在しない生物として語られる幻獣、聖獣、妖精等に分類されているか、或いは人間生活の根幹を幼子に学ばせる目的で意図的に作り出された物語上の登場生物か……そういう扱いだろうと思っていた。
しかし、目の前の男性はひたりと自分の胸元を的確に指し示した。
此処に、確実に、存在するものとして。彼はリースを……精霊を認識している。
「……！」
神代の生物を現代の人間が知る筈はない。精霊は神々に使役されていた、現代に言う非現実的な容姿の持ち主。見付かっていたのなら、今頃世界は驚天動地の最中にあって、自分達もアリアの手掛かりかも知れないと情報に飛び付いていた自信がある。
少なくともベゼドラと出逢う以前には、精霊の名前を耳にした事も、口にした事も無い。
だから、失敗した。
「……」
男性は腕を下ろして自分達の返答をじっと待つ。
後ろに控えた仲間？ 四人も無言で静かに成り行きを見守る。
さりげなくベゼドラに視線を送れば、彼も多少なり驚いているらしい。紅い瞳がいつもより丸い。
ただ、何も言わない辺り、やはり男性達は悪魔憑きでもなんでもなく普通の人間なのだろう。
尋ねられてからたった数秒の経過ではあるが、知らないと否定するには動揺しすぎた。惚けるにも間が悪い。場を濁して背を向ければ此処に居ると認めるようなものだ。
相手の目的も掴めないまま、リースの存在を他者に頷いて良いものなのか？ 彼女に危害が及ぶのではないか？
冷静に対応しなければいけなかったのに……虚を衝かれたとはいえ、迂闊だった。
「……」
判断に迷った自分を見て、仲間の一人が男性に何かを耳打ちする。
直後、男性は「ああ！」と大仰に手を叩いた。
「失礼しました。事を急いて順番を誤ってしまったようです。お赦しください」
「……は？」
男性は背負っていたバッグをそっと地面に下ろし、まさに直立といった姿勢を取った後、カクン！ と腰を折った。
「私はマクバレン。国立生物学研究所在籍研究員です。彼等は私のチームメンバー。普段は研究室に引き籠って作業に没頭している為、極度の人見知りです。居ないものとして……まあ、空気だとでも思って忘れてください」
「……はぁ……」
妙に可愛らしくニコッと笑う男性に、悪意らしき影は見当たらない。
色彩や髪型、身長以外は男性と全く同じ装いで控える男女四人も、よく目を凝らして見れば全員微妙に顔が青かったり赤かったりして目が泳いでいる。
信徒の中
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