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逆さの砂時計
異国の大地 2
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にも稀に人前でこうした反応をする者が居たから分かるが、彼の言葉通り四人は他人と対話する事に不慣れらしい。空気と考えるには少々無理がある気もするのだけど。
 「私はクロスツェル。連れはベゼドラと申します。ただの旅人です」
 丁寧に挨拶をされては、此方としても無下にできない。どんな状況でも礼儀を欠いてはならないと、殆ど反射で頭を下げてしまう。
 「旅人。そのわりには軽装に思われますが……なんにせよ素晴らしい! さぞ多くの生物と触れ合って来られたのでしょうね! どうです、貴方達が見て来た世界は!? どんな風に見えましたか!? 美しいでしょう!! 海から産まれ、大地が育み、大気に還る! 一切の無駄が無いこの完璧な仕組み!! 見て聴いて触って舐めて噛んで飲んで感じる、生物達の生物達による壮大なる生命組曲!! ああ! 私も旅人になりたいッ!! 寧ろ虫になりたいッッ!!」
 「……。」
 「はっ! でも、虫になってしまったら研究のしようが無いじゃないか!? しかし、生態の詳細を知るにはやはり、なりきるのが一番! 虫になって鳥に啄まれる瞬間を体感するのも……って、それじゃ私が死んでしまう! いや、いっそ死の体感を以て他者の肉に変わる仕組みを解びぇんっばぐ」
 「!?」
 いつの間にか控えていた四人がそれぞれバラバラに散って、転がっていた小石や枝や暗闇でよく分からない生物をマクバレンさんめがけて一斉に投げ付けた。
 ガッ ぐしゃ ゴン びちょ と四種類の音に襲われたマクバレンさんは、潰された蛙のような姿で地面に卒倒する。
 ……全部、頭部に当たった気がするのは……気の所為ですよね……?
 「失礼しました」
 しかも、何事も無かった顔でシュパッと立ち上がった。
 頭から何かが滴ってる。
 乗っているのは……海牛? 何故、陸地に海牛?
 流れに付いて行けず瞬いた目の端で、空気と呼ばれた一人が背負っていた黒いバッグに水槽を詰め直している。
 ……重くないのでしょうか……。
 「ナンナノ? ゲンダイジン。」
 ベゼドラが。
 もう、比喩のしようがない顔で。
 棒読みで。
 半眼で。
 何処でもない場所を見て呟いた。
 「私まで一緒に評価しないでください。」
 マクバレンさんが再度一礼してから律儀に海牛を水槽へ戻すと、今度は自身が背負っていたバッグに手を掛けて、中から小さな箱を取り出した。
 「……え!?」
 手のひらに乗せられる程度の白く四角い箱の中を柔らかく埋めた薄紅色のクッション。その上に寄り添う形で横たわっているのは……
 「私達が彼女達を拾ったのは一月ほど前になります。研究施設で育てていた花の下で、力無くぐったりとしていましてね。ご覧の通り、明らかに現在確認されている生物のどれとも違う容姿でしょう? しかも言葉が通じる。話を
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