暁 〜小説投稿サイト〜
雪の結晶
3部分:第三章

[8]前話

第三章

 自分の鋏で色紙を切っていきます。その仁美にです。お母さんは優しい声で言います。
「自分のおてては切らないようにしてね」
「うん、血が一杯出るからよね」
「そうよ。だからね」
 気をつけてと言うお母さんでした。それを受けてです。
 仁美は自分でも紙を切って結晶を造ります。一つずつしっかりと。
 次第に白だけでなく赤や青、黄色に緑、紫と色々な色の結晶ができてきました。その様々な色の雪達がかなり出来たところで、です。お母さんは鋏を止めてです。仁美に言いました。
「それじゃあね」
「もう雪はこれで終わりなの?」
「そうよ。後はこの雪をね」
「どうするの?」
「こうしていくのよ」
 お母さんは今度は透明テープを出してきました。そのテープを両面に。丸くさせて付けてです。
 それを雪の後ろに付けてお部屋に壁に貼ります。そうしてから仁美に言うのです。
「こうしてね。雪をね」
「壁に貼っていくの?」
「そうするのよ。お部屋の白い壁を全部使ってね」
「うん、じゃあ私も」
 仁美もでした。お母さんがするのと同じやり方で壁に雪を次々に付けていきます。そうしてできたのは。
 お部屋の白い壁に振る雪の結晶達、色々な色のそれでした。それがお部屋を奇麗に飾ったのです。
 それを見てです。仁美は目を輝かせて言いました。
「凄く奇麗よね」
「そうでしょ。雪はね。こうしてね」
「自分で造ることもできるの」
「そう。造ることもできるの」
「そうだったの」
「自分で造った雪。どうかしら」
 お母さんも雪を見てその目を輝かせています。そのうえで、でした。
 仁美にです。こう尋ねたのです。
「こうして飾ってみた気持ちは」
「奇麗だし。それに」
「それに?」
「私、今とても満足してるの」
 仁美もです。嬉しくて仕方のない顔でお母さんに答えます。
「こんなに奇麗なのね、雪って」
「そうなのよ。じゃあこれまでよりももっと好きになったわね」
「大好き。大好きで仕方なくなったわ」
「じゃあこれからも何かあればね」
「一緒にね。雪を作ろう」
 仁美は雪は作ることができるのも知ったのでした。そうして雪がさらに大好きになってです。そうしてでした。
 仁美は大人になってイラストレーターになりました。その絵には必ず雪の結晶がありました。白の他の色も使った結晶はとても綺麗で彼女の絵を観る皆をその綺麗さで幸せな気持ちにさせたのでした。全てはお母さんに連れられてお外に出て、一緒に結晶を作ってからはじまったことでした。


雪の結晶   完


                   2012・1・30

[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ