暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第2.5章 出会いと再会は唐突に
第32話 幸福を呼ぶ少女
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事とは到底思えないからだ。

「細かい所までは思い出せません。私は、ある里でいました。名前は判りませんが、そこでは病が蔓延してて……私と同じくらいの歳のコが沢山いて皆同じ病気でした」
「病……、それも沢山のコ達がか……」

 ユーリは心当たりがあった。
 それは10代の娘達に感染する現代では不治の病とさらえている難病の一つだった筈だ。今は何処かに隔離されていると言う事も知っているから。

「はい。……それでも、私達はがんばって暮らしていました。皆で励ましあいながら暮らしてて……。でも、ある日……ある人達に連れられてしまって……皆で逃げ出したんですが、」

 表情を落としていた。
 苦しい、辛い過去の話を無理に話をさせることは無い。

「止めろ。……思い出したくなかったら無理に言わなくて良い」
「あっ はい ありがとうございます、大丈夫です。……それで私の人としての生は終わりました。そして、今はこうして女の子モンスターになってしまってて……」

 幸福きゃんきゃんは涙を再び浮かべた。

「人としても、モンスターとしても、追いかけられて、殺される運命……なんでしょうか? 私は……いつも、きっと人として生きてる前も同じかもって思えて……悲しくて、苦しくて……」
「………」

 ユーリは心をグッと抉られた感覚に見舞われた。どう転んでも殺される運命。
 その抗えないレールの上を走らされ続けた悠久の時代の記憶が彼の目の前で薄っすらと浮かび上がってきたのだ。

「運命なんかない。……未来は自分の手で掴み取るものだ」
「っ……」

 その言葉に心を動かされそうになった。だが、まだ首を左右に振る。

「私は……力もありません。……それに幸福きゃんきゃんは経験値を沢山くれるから、いつも狙われる。だから……無理……なんです私には力なんか……」
「なら、オレが手を貸そう」
「……えっ?」
「これはただの切欠。君がこの手を掴むか、掴まないか。……オレを信じるか、信じないかは、君の自由だ」

 ユーリは手を伸ばした。

 直ぐに手を伸ばせば掴める距離に、先ほどの温かかった手が見える。これまで、ずっと呪われた生と思ってきた。転生しても、終わらなかった。人だったときも人から逃げ、モンスターになっても人から逃げた。運命なんだって諦めていたのに。

「あ……っ、ああっ……」
「……どうした?」

 目の前の男が、光に見えた。或いは、神か……?

「神……様? ですか?」

 だからこそ、そう思ったのも無理はないだろう。この迷宮は薄暗い。そんな中で、2度も光をみたんだから。それを訊いたユーリは首を振った。

「生憎だが、オレは神が嫌いでな。……悪いが違うよ」
「わ、私にとっては、貴方が神様、です。わた
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