異国の大地
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
思しき団体も居た。集団で国境を越えるなんて珍しい。集会でもあるのだろうか? それなら解る。
要職に就いた聖職者は情報交換の為、たまに周辺国から一ヶ所に集まって会議を開く事があるのだ。小規模な会議は大体不定期なので、いつ何処で行われても不思議はない。
……ご苦労様です。
「役所と距離を置いたら跳んで行きましょう。リースは道案内をお願いしますね」
「……うん……」
小さな体が硬くなって震える気配。レゾネクトが居るかも知れないと思うと恐くて仕方ないのか。
弱っている上で圧倒的な力を持つ敵と対面する可能性……彼女の心に掛かる重圧は計り知れない。
会いたくないのは自分も同じだが、現状リースには共に戦える信頼した仲間が居ない。その無事すらも確認できていないとなれば、心細いのは当然だ。
「……大丈夫ですよ」
恐怖で体まで凍え切ってしまわないように、コートの上からそっと彼女を手で包む。
……自分達も、レゾネクトに対しては無力に等しい。
それでもせめて、ひとりきりではないと伝われば良いのだけど。
役所を抜けた人達は、どうやら近くに在る街を目指しているらしい。殆どの馬車は隊列を乱す事無く、同じ方向へと流れて行く。
自分達は役所で手に入れた周辺の地図を確認し、リースが示した方角へと歩き出した。
……が、少々困ってしまった。
人の列を離れて暫く経っても、同じ道を進む集団が私達の前後に居るのだ。
脇道へ逸れようにも、時は真夜中、周囲は森。
人間的に不審な行動で目立つのは、今後の為にも避けたい。
「面倒臭ぇな。休む振りでも何でもして、後ろの奴らを先に歩かせれば良いだろうが」
「こんな細い道一本しかない場所で、ですか? 既に好奇心に満ちた目で見られているのは、貴方も感じているでしょう。下手に足を止めたら声を掛けられてしまいますよ。可能な限り人に顔を覚えられたくありません」
「なんで」
「何処で誰に見られて不審に思われるか分からないからですよ。ただでさえ人間には不可能な旅路を進んでいるのです。余計な追っ手が付いて妙な噂にでもなったら、アリアを追う障害になります。まして此処は異国の地。さっき話していた通り、私達は此方の言葉にも文字にも不自由です。国境沿いならまだなんとかなるでしょうが……基本、対話は通用しないものと考えてください」
「つまり、お前得意の説教も」
「ええ。ほぼ無力です。だからこそ、此方の法律を遵守する必要があるのですよ」
どんなに内容で言い包めようとしても、言葉そのものが伝わらなければ意味が無い。残念ながら、自分が操れる言語にこの国の公用語は含まれていなかった。
幼少期のつまらない意地がこんな形で足を引っ張るとは……皮肉なものだ。
「つくづく面倒臭ぇ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ