それぞれの道
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聖職者でいる間に婦女暴行とか、シャレにならないから」
「そりゃアイツ次第だな。誰かのモノになるつもりなら遠慮なく喰うけど。俺は俺で自由にするし、その間は好きにさせとくさ」
「もしも、仮に、万が一、誰かの手で殺されてしまったら?」
「命って、万物平等だよな」
冷えた瞳に反して口元には曲線が浮かぶ。
この男の考えは、やられたらやり返すなんて可愛いものではないだろう。
どの口が平等を唱うのかと呆れる。
「倫理って言葉の意味を、事細かに教える必要がありそうね」
礼拝堂へ向かって歩きだす新米神父を睨み、彼の後に続いて部屋を出る。
「とりあえず、問題は俺がフィレスをどうこうって話じゃない。フィレスが世界にどう関わるか、だ。また増えたんだろ? 改宗希望者と入信希望者」
「……みたいね。こちらには大きく影響してないけど」
「受け入れは歓迎するが、来る者拒まずとか単純な事態じゃないからなあ。大司教様達も教皇猊下も、今頃は大慌て、ってところか」
礼拝堂への入り口から、教会の出入口付近の様子を窺う。
相変わらず、アーレスト目当ての女性達が黒山となっていた。
「フィレスさんが見たっていう、白金色の髪に、薄い緑色の目を持つ女性。アリア様だと思う?」
ソレスタの隣に立って横顔を窺えば、彼は険しい表情で肩を持ち上げた。
「なんとも言えないな。ただ、フィレスを除いても人間じゃない『何か』が動き始めてるってのは、感じる」
「同感ね」
頷くアーレストも、人間でない者に会うのは、フィレスで二人目だ。
何かが起きようとしている。
しかも、どうやらそれにはクロスツェルが関わっているらしい。
アーレストは内心、クロスツェルと再会した時の自分の対応を反省した。
中央教会に居た頃とは少し違うと気付いていたのに、何も言えなかった。
下手に遠慮などせず、もっと詳しく話を聴くべきだった。
もっとクロスツェルの内面に踏み込むべきだったのでは、と。
「アリア様が本当に顕現されているなら、世界がとんでもないことになる。でも、クロスツェルが巡礼を始めた理由としては辻褄が合うのよ。あの子の信仰心が簡単に揺らぐ筈ないもの」
突然教会を放置して、悪魔と一緒にアリアの色彩を持つ女性を捜して旅を始めたらしいクロスツェル。
フィレスの不思議な体験と力。
そして。
「ま。なんにせよ俺らは神父として与えられた勤めを果たすしかないだろ。当面の心配はないとしても、近いうちに必ず何かしら働きかけが下る筈だ。準備だけはしておかないと」
「……アンタは羨ましいくらい冷静ねえ、本当に」
「慌てても仕方ないだろ。対処っていうのは、本来そうしたものだ。あとはフィレスが宗教関係者に遭遇しないことを祈るしかない。
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