放浪剣士
魔女の血を継ぐものW
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
光の柱は雲を突き抜けると、やがてその形を透過していった。
目の前の現象を理解できないまま、やがてそれは姿を表す。
全身が焼けただれ、最早虫の息となったアリスの母親。
「……ありがとう……」
そう一言呟き、彼女は静かに瞳を閉じて二度と開くことはなかった。
炎の翼が消え地上へ降りると、彼女は母親へと歩み寄る。
その母親の屍を無表情で見下ろす彼女。
なぜ―――?
私の問いかけに彼女は振り向く。
「掟だから」
彼女は語った。
森羅万象を操れる者の代償。
それは、内なる魔力に蝕まれ、やがて魔物へと転化するというのだ。
そしてそうなった時、彼女達は死を選ばなければいけない。
それは、同胞による殺害。
「彼女は分かっていたのよ。自分がもう限界だってことに。だから私にお願いをしてきたの…終わりを」
娘一人残してか―――。
「殺せば姿は戻る。こうして殺せば彼女は誰かに殺された可哀想な母親となって、あの子は可哀想な孤児として孤児院に引き取られるわ」
馬鹿げてる―――。
私はその話を受け入れられなかった。
いや、受け入れたくなかった。
「なぜ、そんな顔をするの?あなた達には好都合でしょう?手を汚すのも死ぬのも私達なのだから」
そういうことではない―――。
私が掴みかかるより先に、彼女は私の胸ぐらを掴んだ。
「同情なんて必要ない。されたくもない…あなた…いや、あなた達、異端審問官にだけは」
気が付いていた。
驚きはしない。
始めから気が付いていたのだろう。
そして、あえて見せていたのだ。
自分達は何者であるのかを。
私は彼女の手を振りほどき、真っ直ぐと見据える。
「殺せるものなら殺せ。敵なら敵らしくしろ。同情なんて必要ない」
殺さない―――。
いや、闘ったとして殺されるのは私だろう。
しかし、あえて私は殺さないと言う。
まだ、私は彼女達の事を何も知らなかったのだから。
「本当に馬鹿な奴ね」
彼女の表情からは何の感情も読み取れなかった。
怒り、悲しみ―――。
いろんな感情が混ざりあいすぎて、もう彼女の感情は壊れてしまっているのかもしれない。
その時だった。
背後に気配を感じ、慌てて振り向く。
兵士に見つかったのか―――?
しかし、背後に立っていたのは兵士ではなくアリスだった。
母親の屍を目にして固まるアリス。
その表情は絶望だった。
「………どうして」
アリスの小さな身体が震える。
これは―――。
「だれがお母さんを殺したの………」
その目には以前のような愛くるしさも光もない。
アリス、君にはまだ理解できないかもしれな
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ