第2章 反逆の少女たち
第25話 魔想志津香
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全て意味の無い行動にしてしまう内容。
焦る人間を笑い飛ばすような。本気の人間を奈落の底に突き落とすような
――そんな内容だった
「私が……私がしてきたことって……、私は、町や皆を……それなのに……」
志津香は唖然としたまま現実を受け入れられなかった。
だが、現実では この世界では自分達の存在も伝わらず、何も出来なかった。認めざるを得ないんだ。何も得られなかった。ただ、町を苦しめ、そして自らも苦しんだ。それだけの事だった。
その時だ。自分の肩を掴まれたのは。
ユーリが、志津香の肩を力強く、掴んでいた。
「……得たものはあっただろう」
ユーリは、もう涙は流れていない。辿ってきた道が、経験が、彼を志津香よりも早く立ち直らせていたのだ。今は、彼らを思い悔やむよりも目の前の少女を助けなければならないだろう。
それが、きっと……2人の両親の願いでもあるから。
「……え?」
志津香はユーリを見た。涙を必至に拭いながら。
「……あの男の。……ラガールの顔だ。オレは、あの顔を忘れない。この手で仕留めるまで、決して忘れない」
「ッ……」
涙をぬぐいながら、志津香も頷く。
ユーリと同じく背後に映るのは憎悪。復讐心。それは決して良いとは思えないし、亡き両親も子供がそんなのを抱いて生きていくなんて望まないだろうと頭では理解できる。だが、これから先、進んでいく為に必要なものなのだ。
立ち止まってはいられないから。歩き出す為に、そして 本懐を遂げる為に。
「殺してやる……、どこにいるのか判らないけど、絶対にこの手で、私が絶対に見つけ出して……お母様とお父様の仇を」
「オレの手もだ」
拳を握り締めている志津香の手をユーリの手で重ねた。温かい感触、忘れかけていた温もりが触覚を通して伝わってくる。
「……オレは冒険者をしている。顔の広さなら 情報屋にも負けない自信もある。……手がかりを掴みやすい」
憎悪に燃え上がるのは何も志津香だけじゃなかった。
それは良くない感情だと頭ではわかっていても生きるためにと、表面上は思っていても、復讐心を強く抱いたのはユーリも同じなのだ。
「あの男だけは殺す。滅殺だ。……魂すら砕いてやる」
「……足手まといにはならないでよね」
殺意が結ぶ絆と書けば言葉は悪い。
だが、志津香は幼いあの頃の絆とは程遠いがそれでも。
悲しみと憎しみ、で彩られていた心に、確かに一筋の光を見た。
何も得られなかったと言う事はない。確かにユーリが言う様に、憎い、何度殺しても殺したりない男の顔が判っただけでも、得られたものはあっただろう。
だが、それと正反対のものも、得られた。
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