暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第2章 反逆の少女たち
第25話 魔想志津香
[11/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
して、この時に全てを悟った。



 なぜ、記憶がこうも曖昧なのかを。
 ここまでの事態があったのに、簡単に忘れるとはどうしても思えない。この光景を見たとき、記憶にかかっていた靄が晴れたのだ。


『記憶は母親の手によって封印されていた』


 そう理解出来たのだ。
 そして、母を責めたりは出来まい。……幼い子供にとってそれは、酷な記憶だったから。だが、ユーリの目からは涙が留まること無く流れ続けていた

 そして、目の前の元凶の男、ラガールは逃がした事こそ、悔やんでいたようだが、惣造が死んだことで笑みを取り戻し再び動けないアスマーゼに近づいていったのだ。アスマーゼは、あまりの事に精神をやられて気を失ってしまっていた。

「ッ!!」

 ユーリは、反射的に志津香の方へと走っていた。蹲っている彼女の先にいるのがラガールとアスマーゼ。これから何が行われるのか……考えられるのは最悪の結末。

「志津香……!!」
「ぅ……ぅぅ……」

 ユーリは、志津香を抱かかえ、この場所から離れた。触る事も話す事も出来ない。何一つ変えられない最悪の時の逆行。呪いとも言える空間から遠ざかる為に。抱かかえられていた彼女だったが、抵抗する事はしなかった。





 そして、環状列石装置の前へとやってきた。
 彼女の足取りはもうしっかりしていた為、ユーリは志津香をゆっくりと下ろした。

「どう言う事……、時空転移魔法は確かに成功した筈なのに……なんで、なんでなの!」

 行き場のない怒りを、そのままユーリにめがけた。拳を握り ユーリの胸を叩く。
 それを見たユーリは、ゆっくりと志津香の両方の手を握った。

「あれは、あれを書いたヤツは悪魔だ」

 ユーリはそう言うと、同時に、1枚の紙を志津香に渡した。

「これは……?」
「気づかなかったようだ、な。……いや、ひょっとしたら最初に読んだ者には見えないのか? ……それは判らないが、あの魔道書の最後のページ。この時空転移の魔法を記されている魔道書の封印されていたページだ」

 ユーリがそう言うと、志津香は震える手でその紙切れを広げた。文字は大きく長くは無い。だから、直ぐに判った。
 
 ユーリがあの時言っていた≪この先≫と言う意味も、これを書いた者は、悪魔だと言った意味も。

「そ、そんな……」

 志津香は、呆然とし立ち尽くした。

 その時、一陣の風が舞う。

 風は志津香から紙切れを奪い去り、そして岩場に当たって止まった。こちらに文字を見せる形で。



『魔法を発動させた時点で死んでいる者は生き返らない』
『過去に向かった者の手で、過去を変えることは出来ない』



 過去に来た事。
 その全てがこれらの文で
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ