89話
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量は決して天性だけに由来するものではない。
一撃の剣戟に滲む悠久の歴史の残影。
才気にあふれた神裂攸人には決して理解できぬ境地、手を伸ばせば届きそうなほどに近くて、それでいて遥かな遠くに陽炎のように霞んでいく理想の果て。
見知った男2人の背中が重なる。
幽邃の赤い光を背に受けて、何度も後ろを振り返りながら荒野を歩く2人の男。その背は孤独で、すぐに挫けてしまいそうで、何度も赤い土に膝をついて、摩耗していく。虚しくて、触れれば崩れてしまいそうで―――それでも、乾いた赤い風に眼球を潰されようとも、欲望のままに黒い夕焼けに手を伸ばし続ける、その姿。
あぁ、そうだ。そんなことは最初からわかっていたことだ。
そういうものに憧れたわけじゃない。乾いた大地を独り歩いていく、そんな生き方が美しいと思ったわけじゃない。
ただ見てみたいと、己と異なる世界に生きる他人の生の輝きを、受け止めてみたいと思ったのだ。
侮蔑羨望後悔希望憎悪愛―――どの感情が合致するのかはわからない。合致するはずも無い。
《デルタカイ》がビームソードを横薙ぎに払う。《ゼータプラス》がビームサーベルの斬撃が奔り、ビームの刃同士がぶつかり合う。
日輪の如く干渉光が迸ったのはほんの僅か。18m以上もあるメガ粒子の剣に弾き飛ばされた《ゼータプラス》が腰のビームキャノン2門を即座に指向。ミリほどの間隙すらなくメガ粒子砲を撃ち込む。
咄嗟の一撃、されど必殺の一撃を、《デルタカイ》は微かに身動ぎするだけで躱して見せ、大出力の剣を振りかぶる。
フェニクスの技量に疑いを挟む余地はない。
だが、それ以上にあの《デルタカイ》の技量が逸脱している。徐々にだけれど押され始めている―――。
「―――大尉ぃ!」
スラスターを爆発させながら照準を重ねる。
ロックオンからトリガータイミングまで僅かに1秒、《デルタカイ》が察知するのと時を同じくして銃口からビームが閃き、光軸が《デルタカイ》を掠めていく。
さらにスロットルを解放し、フットペダルを踏み砕くように押し込む。一気に負荷Gが圧し掛かり、内蔵がぐしゃりと拉げる。身体の末端に血液が押し込められていく感触を味わいながら、怯んだ《デルタカイ》にさらにビームライフルの照準を合わせる。
「隊長、俺が奴を止めます! その隙に隊長が仕留めてください!」
(04、貴様何を―――!?)
「こう、するんですよ!」
さらにトリガーを引き絞る。あまりに直線的なビームの光軸は、あの《デルタカイ》を落とすには至らない。精々が秒ほどの隙を作るに過ぎない。
だがそれでいい。その一瞬の合間すらあれば一気に距離を詰められる。
彼我距離は既に近接戦闘域。ビームライフルの銃身を握り、銃口からビームサーベルを発振させ、即座に袈裟切りを振り
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