89話
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―だというのに。
対峙する灰色の人型は、敵の振るう剣戟のレンジ外に逃げなることはしない。光の剣を振り上げる白い人型に合わせるように、灰の人型も粒子束を振り回し、ビームサーベル同士がぶつかり合って干渉光を爆発させる。
白い人型が叩き付けるのは単なる攻撃ではない。その一撃に己の生の全てを賭し、存在の重さを乗せ、想念の熱を叩き付ける。自身のビームサーベルのグリップすら溶解させる出力で放出されたビームの刃が粒子の飛沫を弾けさせ、2機の機体の表面を焼いていく。
迎え撃つ灰の人型が放つ攻撃もまた、単に機械が繰り出しただけの無機質の所作などではない。己が駆るマスプロダクツに歴史性を与え、腕を振るう力に唯一無二の力を託し、《デルタカイ》の上げる獅子吼に抗して光の聖剣を打ち下ろす。
乱舞する狂戦士、立ち向かう剣舞。
荘厳な神話の挿絵のようだった。
勇壮な騎士物語の一片の詩のよう、だった。
己の身体が崩壊しそうになりながら、それでも構わぬと2機の神の計画の後裔たちが刃をぶつけ合う。その姿こそ、神代の人間たちが繰り広げし戦争に他ならない。
―――神裂攸人に、その沈鬱の啓に見惚れている暇はない。
何のためにフェニクスがビームライフルを託したのか。連邦に背信した己を何故信じるのか―――。
スラスターを焚き、サーベルで斬りあいながらデブリの中を突っ切っていく2機に追従していく。ロングバレルのビームライフルの銃口を絡み合う2機に向け、照準レティクルを重ね合わせる。
ロックオンマーカーに白い《デルタカイ》が重なり合う。トリガーガードに指を入れ、操縦桿のスイッチ越しにトリガーを押し込みかけ―――。
ぎらりと蒼い視線が攸人を捉える。
《ゼータプラス》が振り下ろしたビームサーベル目掛けて大剣を振るうが如くにビームソードを掬い上げる。拮抗も束の間、弾かれる形で《ゼータプラス》がよろめく数瞬、《デルタカイ》はAMBAC機動で瞬時に飛び去り、ロックオンが外れた―――と思った次の瞬間には、直上から灰色の《ゼータプラス》目掛けて手負いの獣が牙を向く。
さっきからこれだ。ただでさえ混戦しているというのに、砲撃タイミングが来るたびに瞬時に察知してデブリの中に消えていく。
片腕を失い、足を欠損し、翼を?がれているというのにむしろ軽やかになったとすら思えるほどの挙動。アンバランスになったAMBAC機動を逆手に取り、天衣無縫の技量でもって躍動する超絶機動。
《デルタカイ》がどんな機体なのか、その詳細を神裂攸人は知らない。『ナイトロ』と呼ばれるサイコミュシステムがどういうシステムなのかも知らないが、ただ言えることはある。
この機動を操り、片手一本だけ戦い続けるその鬼神は、決して機体の性能だけに依るものではない。初めて乗ったであろう機体を手足の如く操る技
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