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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
86話
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同士が鮮烈なスパーク光を迸らせる。
 ぎちりと頭が軋む。ぐるぐると身体中を回り始めた血液が沸騰寸前―――否、既に沸点などとうに超え、それでも液体として煮えたぎり続ける血液が思考を明晰化していく。
(今のお前ならフランドール中尉がどこにいるのかわかるはずだ。だからお前が行け!)
「だが!」
(この白い野郎は俺が引き受ける。テメーの女はテメーで取り戻せ。いいな!)
 通信ウィンドウの向こうで男が口の端を釣り上げる。不敵な笑み―――それでも、確かに見覚えのある人の良さそうな男の笑みが滲んでいた。
 歯を食いしばる。どうして自分はこの男の名前を憶えていないのか。どうして、忘れてしまったのか―――。
(早く行け! お前に構いながら戦える相手じゃねぇ―――!)
 至近からのビームライフルの砲撃を躱した白い『ガンダム』の剣光が奔る。袈裟切りせんと放たれた剣が銃身を両断し、立て続けに閃いた刃が《リゼル》の胴体を撫でるように切り裂く。
「―――すまない!」
(あぁ―――じゃあな!)
 フットペダルを踏み込む。スラスターを爆発させた《ガンダムMk-X》は、剣戟を重ねる2機のMSの脇を抜けるようにして突き抜け、デュアルアイに常闇を映した。
 お前ならわかる。
 ニュータイプ、という言葉が頭蓋で悲鳴を挙げる。頭のあちこちに遍在する何ものかが、神経を鋭敏に研ぎ澄ませるごとに肥大化し、頭を圧迫していく。
 わかっている。その言葉を認めること、己がそれであることを認めることが何を意味しているのか。否、どのような意味を生じさせ、そしてどのような意味を打ち砕くのか。
 世界が瓦解していく音だ。ニュータイプという言葉が大地を揺るがし、その上に築かれた世界ががらがらと倒壊していく音。出来上がるのはクレイ・ハイデガーという男の人生という瓦礫の山だ。
 だが、そんなことはどうでもいい。先ほど決めたばかりではないか。たとえそれが単なる人形の生き方だとしても、己にできることは己を己として引き受けることしかないのだから。
 薄く目を閉じる。
 だが、譬え決意なんかしてみたところで頭痛が収まるわけではない。ずきりずきりと硬化し刃のように鋭利になった神経が脳を内側から貫いていくようだ。その度に苦悶の喘ぎが口の端から零れていくのが鬱陶しくてたまらない。
 意識を保つのだ。でなければ、エレアのことを―――。
(ハイデガー少尉、聞こえていますか?)
 どこかで聞いた声。ミノフスキー粒子に干渉を受け、ざらざらと鑢掛けされたような声が無線通信越しに聞こえたのは、そんな時だった。
 ※
 迸るはメガ粒子の閃光。
 迎え撃つは右手に保持したビームサーベルが描く弧を描く煌めき。
 接触と同時に炸裂する殺戮の迸りが網膜を焼く――――。
 ――――神裂攸人がその組織を知ったのは
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