85話
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「助かりました。貴方方が来てくださらなかったらどうなっていたことか」
基地内警備隊の隊長の顔を見下ろしながら、クセノフォンは「私は大したことはしていませんよ」と通路に急増されたバリケード越しに、その前で警戒する何人かの男に視線をやった。
装備だけ見れば、自分の目の前に居る警備隊の男と変わらない。サブマシンガンも同じ型のものだ。だか、その身のこなしを見ればわかる。足の運び、呼吸の仕方。視線の動かし方、そうした些末な仕草が違う。
と、胸元の無線のコールの音が鳴る。一礼した警備部隊の隊長に敬礼を返し、小走りに走っていく姿を見送りながら、壁に身体を預けた。
「こちらスパルタ」
(こちらルィシ。地下に立てこもっていた敵は排除した。そちらは)
「こちらも完了した。司令の安全は確保したよ。貴官の部下は優秀なようだな」
(当然だ。ECOSのようなルーキーと一緒にしてもらっては困るな)
「街の方はそのECOSがなんとかしてくれているがな」
(こちらには対MS用の装備が無い故仕方ない)
無線越しの声は明るい。流石に設立から100年以上経つ由緒ある部隊、というだけはあるということか。
通信を終えたクセノフォンは無線を右手に持ったまま、肩にかけたサブマシンガンのトリガーを見やった。
敵から奪ったものである。その敵が誰かのかは結局わからずじまいなままだ。
いや、本当はわかっているのだろう。特殊部隊を2部隊も投入しているのだ。上の人間が察知していない筈がない。財団なら軍を動かすことも可能であろう。
―――そして、この一連の事件を意図した誰かのことを考える必要はない。それに対して何かしらの感情を惹起させることも、しない。その立場にない。
だが、それにしても外の方は大丈夫なのだろうか。クレイは、エレアは、攸人は―――。
フェニクスは、大丈夫なのだろうか。
メランコリックに生きている彼女は、大丈夫なのだろうか―――。
―――思案はそれまでだ。壁から身を離したクセノフォンは、血の付いたサブマシンガンのグリップを握り直し、トリガーガードに指を重ねた。
※
人形。酷く嘲笑的に、憐憫的に、嫌悪的に、憤慨的な色を沈殿させた男の鼓膜の奥を直接揺らすような低い声が頭蓋の中身のどこかで反響する。鋭利な輪郭を持った言葉が脳神経をずたずたに引き裂きながら悶えるようにのたうち、その度に頭蓋をかち割って中の白っぽいぷにぷにした肉を?いでしまいたくなる衝動が全身の運動神経を励起させる。
「何を言っている?」全身の内側から剣でも生えてきそうな感覚の中、何とかクレイは咽喉を震わせ舌を動かし、鑢掛けされた声を絞り出した「まるで意味が解らないんだが」
(そうだな、では今の貴様でもわかるように1つ昔話でもしてやろう
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