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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
85話
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2撃目の逆袈裟をなぞるように薙ぎ払われたビームサーベルも、ハルバードの刃を掬い上げるようにして防御。出力に押された白い『ガンダム』が一瞬たじろぎ、バーニアを焚いて距離を離す。
 まだだ、と。まだ死ねない、と。
 己の身体の別な箇所が叫びをあげる。
 お前の生はここで終わるわけにはいかないのだ、と声高に叫ぶ声は、叫びというよりは哀れな声色の悲鳴でしかなかった。現実を直視してもなお抗おうというだけの、身体の意地汚さ=しぶとさがそうさせただけだった。
 想いだけでは何も為せない。身体があっても何も為せない。たとえ身体が動いても、それを統率する人間の意思が無ければ何にもならない。
 だから負ける。白い『ガンダム』が瀑布のような勢いで叩き付けるビームサーベルを捌き切れず、掬い上げる勢いで屹立した剣光がハルバードを打ち上げ、左手を上げる形で《ガンダムMk-X》がのけ反る。
 それで終いだった。怯んだ瞬間、ありったけのスラスターを爆発させた白い『ガンダム』が身体ごと突撃し、金属塊の衝撃が鼻先で爆発した。
 鈍器で殴られたどころの話ではない。それだけで肋骨数本が砕け、内臓が潰れた。
 痛い、という生の感情を抱く暇も無く、背後からの衝撃が脊椎を殴りつける。
 何か漂流物にぶつかったらしい、などという嫌に単純な思惟が頭を過る。咳き込むと同時によくわからない液が口から洩れたが、それが何の色をしているのか、どんな味をしているのか、クレイの知覚は捉えられなかった。
 ぎしぎしと視界に入った罅が広がっていく。
 その傷痕の隙間で、白い『ガンダム』の手の中に光が収束していく。
 鈍い振動が身体の芯を揺らす。全天周囲モニターの向こうで、傷だらけの白い物語が手を伸ばし、
(―――どうだ。お前も俺たちの元へ来ないか?)
 鼓膜を男の声が撫でる。体温のように、触れれば溶けてしまいそうなその声が破裂しぐちゃぐちゃになった頭の中に溶けていく。
(確かにお前の人生は借り物でしかなかっただろう。だが、お前が今確かに持っている力そのものは本物だ。その力は我々に是非とも必要な力だ)
 声が遠くに聞こえる。それなのに、耳元で強く囁く声が耳から入ってクレイの心臓をぐいと握りしめる。
 心臓が脈を打つ。どうやって血液を身体に送っていたのか全く覚えていなかった筋繊維の塊が強く縮まり、肋骨を押し上げるように痛いくらいに膨張する。全身を駆けまわった溶岩のような血液が、血管の中に沈殿していた血液を洗い流していく―――。
(俺たちの組織はまだ若い。構成する人間も若い世代の人間たちだ。新しい時代を作るのは老人ではないからな―――だからこそ、今お前の力が欲しい。若く才気に優れた貴様こそ我々の組織の将来を担う人材だ)
「俺が―――?」
 アルミホイルをくしゃくしゃにしたような、金属が軋むよ
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