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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
85話
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とすると、全てが―――。
「―――嘘を吐くなぁ!」
 機器を破戒する勢いで左のスロットルを全開に叩き込み、フットペダルを破砕する勢いで踏み込む。全身にかかる負荷Gも構わず、クレイは眼前の白い『ガンダム』めがけて《ガンダムMk-X》に猪突を志向させた。クレイの思惟を飲み込んだ赤紫の孤狼が双眼を真紅に閃かせ、1枚の翼で羽搏くように背中に爆発的な閃光を迸らせる。
 頭の中に何か波打った思惟が流入する。
 視界の先、蒼い双眸の奥で見知ったような気がする顔がぐにゃりと歪む。表情筋が強張ったその顔、口角が吊り上がっているようで、でもその蒼い双眸はどこか別な色に染まっているようで―――。
(いいや、嘘なものかよ! それは貴様が一番よく分かっているはずだ!)
 左腕に保持したハルバードの刃を発振させる。Iフィールドで固定された数万度の光の粒子が刃を形成し、一撃の元にあの白い敵を逆袈裟に溶断せんと振り下ろす。真空の常闇に桃色の孤光を描いた刃が直撃する瞬間、白い『ガンダム』はビームライフルのバヨネットを発振させるや、メガ粒子の束をハルバードの切っ先に重ね合わせた。
(お前は今まで一度なりともお前の生に疑問をいだかなかったか? 自分が思っている以上の成果を享受しているとは思わなかったか!?)
 力場同士が干渉し合う刺すようなスパーク光に乗った男の声が視神経を励起させ、頭蓋の中に直接流入する。
 そうだ。そう、なのだ。
 確かに自分は努力をしてきた。努力だけでは報われないと考え、そして事実報われないところもあった。だが、自分がこの『場所』に居ること、それだけに限って、結果的には一度とて『挫折していない』―――。
 (いいや、それだけじゃないな)まるで何かが憑りついているかのように、朗朗と詩を詠いあげるが如くに口からついて流れ出た汚泥のような言葉が鼓膜を突き破り、中を満たしていく。(お前は部隊に入ってからも、部隊にとって人形だったな?)
 ビームライフルごと機体を叩き切ろうとした瞬間、白い『ガンダム』が微かに左腰持ち上げると同時に左半身を逸らし、そして左主脚の膝の部分を折り曲げる。屈折した機体の各点のテンションを一気に解放するように、伸びるのに合わせて激烈の速度で爆発した左主脚が《ガンダムMk-X》の脇腹に炸裂した。
 巨大な玄翁で殴られたような衝撃が全身の血肉を打ち付ける。ただの蹴り一撃を食らっただけでコクピット内の計器ががたつく音を鳴らし、一番脆い肉のアーキテクチャはそれだけで臓器からせり上がった液体をコクピットの中にぶちまける。
 咽喉が焼ける。口の中に刺すような味がのたうつ。意識が根こそぎ刈り取られてしまいそうだ。
 だが、そのインパクトの瞬間に、クレイは即座にバックパックのビームキャノン2門を脇下から立ち上がらせ、右肩に懸架されたN-B.R.D
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