83話
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閃くは殺戮華。
炸裂するは撃鉄の慟哭、暗い穴から鋭利な殺意が唸りを上げる。
金属の弾丸が500m/sほどもある速度で空気を切り裂き、その基本理念の行為遂行を専心する。
金属の鋭さが生命の肉を貫き、衝撃だけで人間の頭骨を破砕する。
鼓膜を打つ悲鳴、視界にちらつくゴーストを孕んだマシーンの表情。
その全てが、オーウェン・ノースロップにとって、徹底的に微分的なオーウェンと言う存在の時間概念にとって、単なる戦域情報のノイズでしかなかった。右手のサブマシンガンのトリガーを引き、銃撃される危険があれば遮蔽物に身を隠す。彼の行為を端的に言い表せば、ただそれだけの動作の反復に過ぎなかった。
最後の弾丸がどこかのビルのオフィスを飛び去り、ラストターゲットの首と頭部、心臓を正確に貫いていった。
「SSEへ、こちらリンクス、B-1地区の制圧完了」
(リンクスへ、こちらSSE。了解した、貴官はSE3の援護に当たれ)
「リンクス了解、オーバー」
ざらざらした雑音まみれの通信を終え、オーウェン・ノースロップは、サブマシンガンの―――サブマシンガンにしては比較的大きめなその銃の残弾が乏しいマガジンを排除し、予備弾倉を入れ込む。半ば無意識にその動作を行いながら、オーウェンはやたらだだっ広いいオフィスを見回した。
薄暗くて常人には見え難いが、そこには十何人分かの冷たくなった、または冷たくなりつつある肉の塊が転がっているはずで、オーウェンの目にはその物質がそれなりの輪郭を持って映っていた。
とんだ殺戮ショー。そしてこの血の生誕祭の主催者は、ただ、オーウェンという1人の人間に過ぎなかった。
頬についた血を左手の袖で拭う。少しほども感情を動かさず、色のない視線で己の行為を眺めていたら、いつの間にかマガジンの交換は終わっていた。
周囲に鋭い一瞥をくれた後、オーウェンは足早に任務遂行のためにそのオフィスの出口に向かい、そうして出口のドアノブに手をかけた時―――。
オーウェンは、背後を振り返った。
薄く灰色のヴェールがかかったような視界の中、遠くの窓辺から人工の月光が差し込んでいる。外からはMS同士が戦闘する音が微かに響いていた。
それ以外の音は無かった。呻き声すらも無く、蟲の歌う声も、蜥蜴が走る音すらもなく、ただモノコードによる沈黙のラプソディが満ちているだけだった。
その一連の動作は、オーウェン・ノースロップという機械に生じたバグ、あるいは誤差であったのかも、しれない。
オーウェン・ノースロップは天上を仰いだ。光の燈っていなLEDの電灯が真上にあった。
廊下に出て、走った。
※
弧光を引いた光刃が横薙ぎに払われる。シールド裏からメガ粒子の刃を発振させ、その剣戟に重ねるように叩き付けた。
力
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