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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
83話
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の機体だな!」
 予め指示されていた無線通信のコードにセットし、マクスウェルは無線越しの怒声を浴びせた。それに反応するように、全天周囲モニターの向こうでその機体が扁平な外観から四肢を持った人型に瞬時に可変しながら、その並列しデュアルアイを静かに《リゲルグ》へと注いだ。
「貴様らのごっこ遊びに付き合ってどれだけ無為に人が死んだかわかっているのか!? 貴族ごっこをするなら後始末くらいは綺麗に―――!?」
 マクスウェルは、その瞬間息を飲んだ。
 その2つ並んだ蒼い瞳は、どこまでも無感動に《リゲルグ》を、マクスウェルを睨めつけた。
 その眼差しは、出来の悪い子どもを―――否、養豚場の豚を品定めするかのようですらあって―――。
(隊長―――!?)
 マクスウェルの視界は、次の瞬間には白く染まっていた。
 ※
 白い〈ガンダム〉が巨大なビーム砲を構えるのと、そのトリガーを引くのはほとんど同時ですらあった。迸った光軸は一瞬で《リゲルグ》を貫き、巨大な爆光が宇宙に広がった。
 マクスウェルの名を叫ぶ少女の声が耳朶を打つ。
 エイリィ・ネルソンは一瞬の躊躇すらなくビームライフルとバックパックの二連装ビーム砲を指向し、〈ガンダム〉目掛けて間髪入れずに光軸を叩き込んだ。
 屹立した3つの閃光の狙いは、その早打ちに反してあまりに正確だった。躱しきれなかったガンダムはシールドでそれを弾きながら一気にスラスターを爆発させ、肉迫と同時にビームライフルの銃口を《キュベレイ》へと指向する。
 迸った大出力のメガ粒子の砲撃を皮一枚でなんとか躱した瞬間に、コクピットに警告のビープ音が甲高く鳴り響く。
 ビームサーベルを発振する白い〈ガンダム〉。エイリィが反応するより早く彼我距離ゼロまで肉迫した〈ガンダム〉が灼熱の粒子束を一撃、まるで叩き付けるが如くに振り下ろす。Iフィールドで固定されたメガ粒子の刃は漆黒の《キュベレイ》の腕をまるで硝子を溶断するように一太刀で切り飛ばし、溶解した金属が血の飛沫のように宙に四散していく。
 エイリィには、その光景を眺めている暇すらなかった。束の間の猶予すらなく《キュベレイ》の胴体目掛けて撃ち込まれた〈ガンダム〉の脚部の一撃は、コクピットの隔壁越しにエイリィへと諸に殺到した。それこそ数トンに達する衝撃は、強化ノーマルスーツを着ていたとしても気休めにすらならない衝撃だった。コクピット内の計器が拉げる音が鼓膜の中で炸裂し、自分の脳みそのどこかに剥離した頭蓋の一部が突き刺さってぐちゃぐちゃにするような錯覚が過る。肋骨の何本かが容易く砕け、肺に突き刺さったせいかエイリィは血の塊を吐いた。それでもバイザーにへばりつかないようにバイザーを上げたのは、無意識的なパイロットの性でしかなかった。
 朧な視界の中、白い〈ガンダム〉が背中に炎を背負い、ダー
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