81話
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れがしろいせかいにいくしょうじょにはとめられないたつのもめんどうくさくてはってどあまでいくはくちゅうのせかいにかれのすがたはなかっ
※
エレア・フランドールは、頭蓋の奥に拳大の石でも埋め込まれた様な鈍い頭痛の中、朧な意識を取り戻した。
暗いなぁ、と思った。自分の座るシートのあたりがぼんやりと光るばかりで、丸く切り取られた黒い世界は酷く窮屈だった。
かちゃかちゃと異音が耳朶を打つ。コクピットハッチの前で誰かが何かしているらしい、とぼんやりと思いながら、エレアはヘルメットのバイザーを開けた。暑かった。
「しかしここまで厳重だとは思いませんでしたよ」男の声だった。
「それだけの物だということだろう。『神の人』計画の遺産……いや、その亜種か」こっちも男の声で聞いたことがあるような気がしたが、エレアにはどうでもいいことのように思えた。
何があったのだろう「しかし連邦の強化人間なんて信用できるんですかね」頭がずきずきする「そこは連邦のお偉いさんたちの情報を信じるしかあるまい」あぁもううるさいなぁこっちは考え事をしているのに。《私》にはやらなければならないことが確かにあったはずなのだからそれを思い出したいのだ―――。
「でもこれで万事オッケーですよ。これで僕たちが守りたかったものが守れるようになる」
「―――あぁ、そう、だった、な」
嬉々とした若い男の声に、どこか歯切れ悪く壮年の男の声が返した。
守りたかったもの、守りたいもの。守らなければならないもの。
中身を刳り貫かれてドーナッツみたいな言葉がぐるぐるエイドスの器官を巡っていく。
ぽっかり空いた空無の奥、安らいの淀みの内に住まう存在が静かに叫ぶ。
薄く白い繭の中でゆっくりと絞殺されていくような感覚の中、少女は誰かの姿を瞼の裏に、薄暗がりの向こうに見た。
―――どこか黒い森の奥。朝焼けの空の下、目覚めたばかりの小鳥たちが耽美な詩神たちと睦まじげな物語りを詠っている。舗装されていない細い道はデザートイエローの砂で、一歩歩くたびに軍靴がちりちりと小石を噛む。小高い丘の上、襤褸になり始めた小屋に手をかける。ずっと人の手に触れられてきたのだろう、そして建立から緩やかな時間の到来の中を過ごしてきたのだろう、取っ手は触るだけでかたかたと音を鳴らし、手触りは古い木の滑らかさと厳かさを感じさせる。
扉を開ける。人一人生活するのでやっとといった風の小屋の中で、その思索する人は足を組んで椅子に座っていた。いつものように親の仇とでも相対しているように眉を厳しく寄せた険しい顔に、思案気に顎を掴んだ手。まるで人間とは思えない何かが静かに木製の色褪せた灰色の椅子に座って分厚い本を眺めていた。まるで広々とした荒涼の野の中、堅い岩くれに座って孤独に過ごすかのよう。
幼年の澄んだ闇の戯れと成熟の
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