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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
78話
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 あぁ、そうか―――クレイはどうしてこんなに嬉しいのか、なんともなしに理解した。
 エレアの身体を身近に感じることが出来るのがこんなに嬉しいなんて、彼女が存在しているということがこんなに嬉しいなんて。
 しとしとと降りしきる雪のように白く果敢ないこの少女の存在が、ずしりと重さを伴う。どれほど彼女がここに来ることに自分が貢献したのかは正直よくわからないが、微か程でもそれに貢献できたことが、忘我するほどに嬉しいという感情を惹起させた。
「それに言ったでしょう? 俺の腕を信じろって」
「やられてたけどね」
 そう言われるとなんとも言えないのだが…。どこか悪戯っぽさと無邪気さを感じさせるエレアの表情に、クレイはまぁ、うん、となんとも歯切れ悪く応えるしかなかった。
「水を差すようで悪いんだが」
 ごほん、と不自然に咳き込みながら、フェニクスは奇妙な顔をしていた。その表情が奇妙に罅割れているように見えて一瞬目を見張ったが、錯視にしか過ぎなかった。
 慌ててエレアと立ち上がりながらも、クレイはフェニクスの言わんとしていることくらいは理解していた。何より、エレアが来ている服がYATL-00A―――オーガスタ研究所で制作された対G強化型ノーマルスーツであることが何よりも物語っていた。
「外の戦闘に介入するのですか?」
「正確に把握しているわけではないが押され気味らしくてな。コロニー守備隊側の戦力が足りていないらしい」
 フェニクスが向こうに視線を投げやる。全身の装甲を高熱で焼かれ、コクピットにビームサーベルを突き刺されたままの《ギャプラン》の骸がどこかの格納庫に墜落し、拉げた金属の揺籃の中で声も無く片手を上げていた。
 死のシーニュ―――浮かんだ言葉を、クレイは否定した。それはただの、物質と化した金属塊以上の存在性を剥奪されたものでしかなかった。
 フェニクスは複雑な様子でそれを眺めていたが、そうしていたのは束の間ほどの時間だった。
「『偶然』我々の部隊は明日の実弾使用の演習のために実弾を装備しているからな―――疲れているだろうが、お前にも出てもらいたい。ヴィルケイとジゼルの機体はもう実戦に耐えられる状態じゃないからな」
 記憶のどこかでオーウェンの声が耳朶を打つ。あれからまだ2時間と経っていない筈なのに、もう何十年も前の出来事のようだった。
「ヴィルケイの《リゼル》は中身の損傷が酷い。アムロ・レイの真似事でもしたんだろう。ジゼルの《ガンダムMk-V》は左腕をごっそり持っていかれた。オーウェンは市街で戦闘中、クセノフォンは司令部に侵入していた敵の掃除中。動かせる戦力は私とエレア、ユートとお前だけだ」
「ユートは大丈夫だったんですか? あいつ確か今日は休暇中で一日宿舎で休んでるって―――」
 「あぁ、無事だ」そう言うフェニクスの顔は、ちら
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